第4章 隣の芝生は青く見える
それにルー様は、あの零れそうな魅惑ボディのドレス姿には目もくれない。丸で風景の一部にしか見えていない様だ。王妃様から私に視線を変えれば、他には何も見えていないみたい。
傍に来ては、王子が私にかしづく。いいの?王子なのに。王妃様は仕方ないわねって顔をして、それ以上何か言われることはなかった。
「私に愛を乞う時間を貰えるか?」
「王妃様に失礼では・・・。」
「本当に、カオリの方が分を弁えているじゃない。それに免じて、退出しても構わないわ。」
ルー様は私をその場から連れ出した。相変わらずの指を絡めた恋人繋ぎで。本当に良かったのだろうか?王妃様のお茶会だったのに。
「茶会のことなら案じなくていい。最初から、母上には申し伝えてあったからな。」
「そうだったのですか?」
「あぁ、私がカオリに惚れていると見せつける為にな。一芝居打ったという訳だ。」
一芝居?何故?
「では、愛を乞うと言うのは芝居の一環ということですか。」
「いや、それは事実だ。」
指先に唇が触れ、抱き寄せられる。
「さっきも言ったが、そのドレスよく似合っている。」
「ありがとうございます。」
「口付けても?」
「勿論。」
囁くことはなかったけれど、それ以上に好き好きオーラを浴びせられる羽目となった。
その後、一芝居の経緯をルー様から聞いた。あの二人の令嬢が騎士団でルー様から特別視されていると触れ回ってると吹聴しているらしい。
騎士団の中ではそれを真に受ける者もいて、その間違いを正すために見せつけたらしい。親も交えて。まぁ、それはそれで私には文句はない。
だが、今日も何処かで見ているのでは?あの敏腕小姑に。と、思ったら、そこに現れたのは騎士団在籍の令嬢二人だった。想像以外だった。
ハッキリ言って、令嬢たちに見せつけている。私たちの熱い抱擁とキスシーン。ねぇ、ルー様。私は物凄く恥ずかしいのですが?って、どうしてもっと深いキスをして来るのですか?
あ、終わった?唇へのキスは終わったけれど、真顔のまま私のあちこちにキスするルー様。ある意味面白いシチュエーションだ。だって、無表情だもの。
「今日も、出会わせてくれた女神に感謝してもし足りない。私は愛を乞わずにはいられない。愛しいよ。」
言葉は反比例しているから、更に面白い。