第4章 隣の芝生は青く見える
「初めての茶会だと言っておりましたね。所作が美しく驚いているのよ?マナーを習ったことがあったのかしら?」
「いえ、一般教養くらいしか学んでおりませんし、所作は母から教えられました。」
「そうなの。よいお母様なのね。」
確かに、何処に行っても恥をかくことはなかった。背中を丸めていたりなんかすれば、よく叱られていたっけ。今更ながらだけど、母に感謝だ。
マナーは、洋食好きの母が、母大好きの父が頑張って少しお高い外食にも連れて行ってくれていたのが生かされているのだと思う。結局、母のおかげ?少しは父の頑張りもあるけれどね。
でも、ルー様との食事はちょっと普通の貴族とは違う気がする。だって、あんなに横並びで近距離じゃないと思うから。
まぁ、私も彼氏と食べさせ合いっこするとか正直言って憧れはあったし嫌ではない。嫌ではないのだけど、食事中なのに私しか見ていない気がする。料理人さんたち、何かごめんなさい。ちゃんと美味しいですから。
それは兎も角、あの魅惑ボディ零れそうだなぁ。同性ながら、あんなに見せつけていいのか甚だ疑問だ。まさか、ルー様の好み・・・とか?
う~ん、流石に本人に聞けないなぁ。仮に聞いたとして、肯定されたら凹む。屈んだら見えそうだし。私には真似出来そうにない。羞恥心はなくせない。
「それにしても、余程嫌だったのね。ルーチェスは。」
「何がですか?」
「貴女の肌を、他の誰かに見られるのがよ。」
そう言われたら、肌の露出は殆どない。首までしっかり隠されたドレスだもの。でも、体形は程よく披露出来ていると言いますか。
「本当に、親子で同じ思考だなんて面白いわね。」
「親譲りということですね。」
ルー様の父親だと言うことあって、年は重ねていても見目は麗しい。王妃は言わずもがな美魔女である。
「まぁ、私が主催したお茶会だと言うのに、我慢出来なかったの?本当に束縛が過ぎるとは思わないのかしら。」
柱の陰から現れたのはルー様だった。
「「ルーチェス様っ!!」」
令嬢の声がハモった。何処までも仲よしだな。
「申し訳ありません、母上。どうしても私の愛おしいカオリのドレス姿を見たくて。」
お母さん相手に、彼女のことを愛しいなんて言う人が日本には早々はいないはず。少し恥ずかしい。