第13章 ニ通の手紙
――――灯りはつけたまま寝台に寝転んだ燦姫様。
今夜だけは好きなお酒も飲む気はしなかった。
だいぶ夜も更けていて、うつらうつらとしたその時、婢女部屋から微かな物音がした。
燦姫様は胸騒ぎがして飛び起き、婢女部屋の戸を開ける。
「ネズ!」
既に寝台に私の姿はなく、代わりに部屋に居たのは息を切らしたネコさんだった。
ネコさんの報告を聞いて、へたりと床に座り込む燦姫様。
「………ネズ……目を離すんじゃなかった!」
だがすぐに毅然と立ち上がり、
「岩牢に向かった五王たちに手紙を書くよ!
ネコ、すぐ碧水に預けるんだ!」
筆をとり、今起きていることを素早く紙にしたためた。
そして裏庭から五王様の御殿へ渡ったネコさんから手紙を受け取った碧水さんが、馬を飛ばして岩牢までやって来たのだ。
「ネズ!ネズが攫われたって!?」
ナンは掴みかからんばかりの剣幕だ。
「―――急がないと赤ん坊が産まれてしまう!沙良が産んだことを隠されたらおしまいだ。
ナン、ネズを任せていいか?」
「当たり前だ!」
ナンは馬の腹を蹴った。
「待て!兵をいくらか連れていけ!」
五王様の指示で屈強な兵士が数人、ナンの後を追った。