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燦姫婢女回顧【R18】

第13章 ニ通の手紙


ネコさんは麗姫様が只ならぬ様子で出掛けたという知らせを持ってきた。

すぐにナンと軍を率いた五王様が岩牢に駆けつけたが、沙良を乗せた荷馬車が後宮へ向かった後だった。


「五兄、三王の馬がないぞ。」

「隠して停めている可能性もある。まずは踏み込んでみるか。」


五王様が軍に命令を下そうとした時、一騎の馬が急ぎ駆けてきた。

息せき切って馬から下りた男は一通の手紙を差し出した。

「燦姫様から預かりやした。」

五王様の近くにいた兵士がそれを受け取り、注意深くあらためる。

危険がないものと確認された手紙を五王様は開封した。

流麗な文字が並んでいた。

『ネズがすべてを打ち明けました。
沙良が話したことはすべて嘘とのことです。

お腹の子はこっそり後宮を抜け出して遊んだ街の男との子です。梅花もそうでした。

沙良は後宮を辞めたくなくてネズを脅して芝居に協力させたのです。』


ナンも手紙を覗きこんだ。

「これは……………」


五王様は兵士に何某か指示をした。

手紙を持ってきた男が捕らえられ、喉元に剣を突きつけられた。


「この手紙は誰から預かった?」

「だ、だから燦姫様からで………」

怯える男。

「本当は誰だ!?」

兵士の剣が男の首にぴたりと当てられた。

「ひぃぃぃぃっ!」

男は悲鳴を上げた。

「姉上がこんな綺麗な字を書くはずはない。」

五王様は手紙を地に叩きつけた。
ナンはうんうんと頷く。

男は観念した。

「れ、麗姫様からですっ!い、命だけは助けてくれー!」



「……随分と陳腐なことをするな。」

「五兄、牢に踏み込もう!」

「ああ。」


五王様が槍を高く掲げ、軍隊は一斉に岩牢へと突進した。


「うわ……何だ何だ!?」

腰を抜かす見張りたち。

「開けろ!」

「へ、へいっ!」

見張りは気迫に圧され、岩戸とその奥の木戸を開けた。

五王様とナンは馬を降り、注意深く中に入る。


「五兄!誰もいない!」

「もぬけの殻だな…………」


そこへまた一騎早馬が近づいてきた。

――――碧水だった。

碧水から受け取った手紙を開く五王様。


「…………………これは本物で間違いないな。」


「そうだね、五兄。」

手紙を見たナンも同意した。
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