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燦姫婢女回顧【R18】

第12章 コケモモ


廊下の柱の影でナンが五王様に小声で事の次第を報告する。

それを聞いた五王様は長い衣を翻してご自分の御殿へと向かった。

小走りで後を追う私たち。


王の御殿は女人は入れないことになっているが、男装した私は問題なく通された。


「碧水!」

碧水と呼ばれた目元の涼やかな若い男が五王様の前に跪いた。

「鼠姫、梅花の故郷(くに)はどこか分かるか?」

「たしか東の………海の近くだと……」


五王様の腹心の従者である碧水さんは一礼すると御殿を飛び出して行った。

「ネコには麗姫が出掛ける気配を厳重に見張らせるか………」




数日後の夜更け、五王様がナンを伴って離れにやって来た。

「碧水が戻った。」

言葉は重々しかった。

「……東の村へ向かう街道沿いで少女と生まれて間もない赤子が亡き者にされているのが見つかった。」

(!!)

「何てことよ!」
燦姫様が立ち上がり叫ぶ。

「間に合わなかった………」

五王様は拳を床に叩きつけた。


「前に帰されたという杏珠も家に戻っていなくて行方知れずだって。

くそっ!あいつら一体どれだけの女の子を!」

ナンは肩を震わせている。


そこへネコさんが音もなく現れた。






岩牢―――――――
血走った目をした麗姫様が沙良に詰め寄っていた。

「沙良!これは何?!」

沙良に突きつけられたのは濃赤色をした小さな実。コケモモだ。

「見張りがこれが落ちていたと報告してきたわ。どんなことでも報告する様に言っておいて良かった。」

「燦姫のところの婢女が持ってきたもので間違いないのか?」

三王様が気怠そうに言う。

「ええ、間違いないわ。沙良の鏡台の下に落ちていた実と同じものよね!

コケモモなんて珍しいものは王族しか食べられないのよ!」

「あの婢女は王族と通じてるのか。」

「七王がご執心だとウワサになっているのよ。
七王はあのうっとうしい五王の弟分。

妙な動きになっているに違いないわ。」

沙良は震える口唇を噛み締めて俯いた。


「やっとここまで来たのにネズミごときに邪魔されるとは!


沙良を私の部屋に隠すわよ!」


麗姫様は外に出て、見張りたちに指示をした。

沙良はここに来た時の様に簀巻にされ、荷馬車に乗せられた。
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