第12章 コケモモ
―――――そこまて話して沙良はわっと泣き出した。
私は細くなった沙良の肩をぎゅっと抱き締めた。
「辛かったね、辛かったね沙良。」
「……許せねえ、こんな酷いことがあるか!」
側で話を聞いていたナンの瞳は怒りで震えていた。
壁際で茫然としていた梅花が口を開いた。
「麗姫様と三王様は今年は「豊作」だって喜んでる。今まで「種付け」した婢女は孕まなかったりだめになったりで―――あとここで舌噛んで命を絶った娘もいたって。」
「………何てこと!」
「沙良とわたしが二人とも男の子産んだら「双子の皇子」として育てるらしいよ…………」
「そんな勝手な………絶対助けるからね!舌噛んだりしちゃだめだからね!」
「そうだ!あいつらの思い通りにはさせない!」
私は泣きじゃくる沙良の背中をぽんぽんと叩いた。
「沙良………また来るからね。何か食べたいものとかある?」
「………コ……ケ……」
「え?なあに?」
「コケモモ…………前にネズがくれた……」
「わかった。沙良。」
「そろそろ行こう。見張りが目を覚ますとまずい。」
ナンに促されて私は沙良と梅花の手をぎゅっと握り締めてから岩牢を出た。
後宮の離れで待っていた燦姫様と五王様に私たちは見て聞いてきたことすべてを伝えた。
「大体は想像はついていたけどここまで酷いとはね。」
「命を何だと思っているんだ!
しかし巧妙に仕組んでいるな。
軍隊を使えば今岩牢に踏み込むことは容易だが、何とかして言い逃れるだろうな。」
「じゃ、どうしたらいいんだよ!」
「焦るな、ナン。」
「こうなってしまったからあの娘たちは産むしかないね。」
燦姫様は苦々しく云った。
「産まれた赤子を三王たちが取り上げた時に押さえるしかないな。
先に産み月を迎えるのは……梅花だな。」
「そうだね、だいたい春中だね。」
私は立ち上がって叫んだ。
「その前にもう一度岩牢に行きたい!沙良たちに五王様たちが助けるって言いたい!」
牢の二人はかなり追い詰められている。希望がないと変な気を起こすかも知れない。
「確かに、事前に知らせておいた方がいいな。次のチャンスは―――――」
「春先の花見の宴の晩だね、また麗姫には着物と宝石でもやっておだてて足止めしておくよ。」
(花見の宴………)
「あのっ!「蕾酒」は?!」