第10章 追跡
(沙良!)
沙良と梅花は見張り役ではない男が入ってきたことで顔をこわばらせた。
二人とも防寒の為か着せられていた綿入りの着物の上からでもお腹が膨らんでいるのが分かる。
私は中には見張りがいないことを確認してから、頭巾を外した。
「沙良、私だよ。」
「………………」
無言で私の顔を見た沙良はもう泣くことも諦めた茫然とした表情(かお)をしていた。
綺麗に結われ簪に彩られていた髪はざんばらで着ているものも粗末だった。
私は近寄って手を握った。
氷の様に冷たかった。
「沙良?……沙良、辛かったよね。
安心して。力になる。
こっちはナン……こんな格好してるけど七王様。
大丈夫、味方だよ。」
「ネズ…………」
沙良はやっと口を開いた。
「何があったか話してくれるかな?
沙良。」
沙良は数回まばたきをすると、遠くを見る様にしてぽつぽつと話し始めた。