第8章 沙良
高齢で臥せっておられる現帝の代替わりはもう間近だった。
次に「帝」となられるのは一王様、これは国の伝統で決まっている。
問題は次の「一王様」だ。
代々高齢になってから即位する「帝」はこの国では実は名ばかりで実際国の長として治めるのは「一王様」だ。
残念なことだが一王様の息子は何人かいたが例の流行り病で全員命を落としていた。二王様には元から皇女様しかいない。
他の王様方には子どもがまだいなかったり、いても年若い方ばかりだった。
そこで新一王様には元王様方が繰り上がっていくこととなっていたが、有力なのは帝の第一妃様から生まれた王だ。
それは今の一王様、三王様そして六王様だ。
一王様は帝にご即位が決まっているので三王様か六王様が新一王様候補となる。
一王となる有力な条件は「お世継ぎがいること」だ。
三王様は妃が5人いるにもかかわらずお子様がいらっしゃらない。
となると新婚の六王様に皇子様がお生まれになったら……
「麗姫姉様は綺麗だが狡猾なところもあると聞いている。」
五王様が云う。
麗姫様が一王妃の座を狙っていたとしたら、何としても六王妃、輝姫様のご懐妊を阻みたいはずだ。
「まあ、問い詰めたところで確固たる証拠がないから無駄だろうな。薬湯を持って行った婢女に罪をなすりつけられるかもしれない。
そうなると鼠姫も巻き込まれるな。」
「………!絶対そんなことはさせねえぞ!」
「ナン、そうイキるな。
……六王には俺から気をつける様に言っておこう。今回は失敗してもまた何か仕掛けてくるに違いない。」
「何だかめんどくさいことになってるねえ……」
燦姫様はため息をついた。
その翌日から、沙良が―――――――――――
姿を消した。