第6章 夏至祭
この国に隣接する小国「燦国」は長くこの国の占領下にあった。
ある時「燦国」の反乱分子が蜂起し始め、あわや戦争になりかけたが、争いを好まない現帝が自らの皇女を差し出すことで侵攻を食い止めた。
友好の印として「燦国」からも皇女がこの国に嫁がされた。それが燦姫様だ。
一王様の妃となるはずだったが、その頃悪い病が流行していて第一妃様が重体になっておられた。そんな状況で一王様は新しい妃を迎える訳にはいかず、二王様の後宮に入られたのだ。
五王様とナンのお母様はそれぞれ別の「燦国」出身の女性だった。占領下時代に略奪されてきた女性たちだったらしい。
お二人とも若くして命を落とされたという。
お母様と同じ国の出で面影の近しい燦姫様に五王様とナンは惹かれ、何かと理由をつけては蛍離宮に通ってきているとのことだ。
五王様はご結婚されてからは妃様たちの目もあるので頻繁にはいらしてなかったが、まだ独り身のナンはこの通り自分の御殿の様に自由に出入りしている。
―――――真夏の近づくある日のことだった。
いつもの様に洗濯場に行くと、沙良がぎゃあぎゃあ喚き散らしていた。