第5章 蛍の化身
七王様―――――いや『ナン』は相変わらず離れにやって来ていた。
以前とまったく変わらず姫様や私と他愛ない会話を交わしていく。
「この子さあ。」
(一応王様なのにこの子呼ばわり?!)
「小さい時、自分のこと『七王』って言えなくて『ナン』て呼んでたんだよね。」
姫様が教えてくれた。
どうやら子供の頃からこの離れに出入りしていたらしい。
――――王族と分かった今でも表面上は何の変わりはなかったが、私は眠れない夜が続いていた。
最近気温が上がって寝苦しくなっているせいもあるが、花見の宴の翌日にナンが私に囁いた言葉、そして真っ赤になった表情が頭から離れなかった。
その宵も私は悶々として何度も寝返りをうっていた。
「お水でも飲んでこようかな……」
と起き上がった時、聞こえてきたのは―――
(!……野良猫がサカってる?後宮(ここ)にも野良猫いるのかしら、村ではよく春先に聞こえていた鳴き声だけど。)
鳴き声は外からではなかった。
(……………隣(姫様)の部屋から?!)
隔てる戸が今夜は何故か少しだけ開いていてぼんやり灯りが漏れていた。
私は音を立てない様に寝台から降りて、恐る恐る戸の隙間から隣室を覗った。
「………!」
思わずはっと息を呑んでしまった気配が伝わってしまったかもしれない。
いや、二人の様子からしてこちらのことなど全く耳にも目にも入っていない様だ。
毎晩どこに居るのかわからなかったが、ネコさんは姫様の寝床に居た。一糸纏わぬ姿で。
ベ〜ルを取ったのを初めて見た。
髪の毛が尼僧の様にすっかりと剃り上げられていた。眉も無く妖しく光る切れ長の目が際立って見えた。
まさに『ネコ』の様に四つん這いになって、しなやかなカラダを姫様に擦り寄せていた。
肉色のほとんどカラダが透けて見える夜着を着た姫様はネコさんの丸い頭を愛おしそうに左手で撫でていた。
右手にはあるモノを持っていた。
初めて見る、象牙で出来た「腸詰め」の様なカタチのもの………
「私のネコ、可愛いねえ。そろそろコレが欲しいかい?」
ネコさんは尚一層甘い声を上げて姫様にお尻を向けた!
「いい子、いい子…………」
そう言いながら姫様は右手のモノをネコさんのアソコに?!
ぐぅっとネコさんは背中を反らして突き出した腰を揺らし始めた。