第2章 蛍離宮
三の王第ニ妃、麗姫様の一団だ。
麗姫様は年若い婢女たち4〜5人を卓に座らせ、自分と同じ食事を食べさせていた。その中には今日私と一緒に後宮(ここ)に入ったあの沙良の姿もあった。
「さあ、沙良ちゃん、もっと召し上がれ。
果物も取ってあげましょうね。
梅花ちゃんはお魚が好きなの?いい子ね。」
ウワサに違わずその名の通り麗しき麗姫様が御自ら給仕をして着飾った婢女たちに御馳走を食べさせている。
沙良が私に気がついた。
目を丸くして私の姿を一瞥すると、貰ったばかりの紅い簪を揺らして見せつけながら口角を上げて見せた。
地獄の様な広間での夕食が終わり、私たちは離れに戻って来た。
「早く慣れなさいよ!明日からもずっと裸だからね。」
(ええ〜そんなあ〜)
私は沙良が今夜着せられていたお花の刺繍のたくさん付いた可愛らしい紅いおべべを思い出していた。
(あそこまでいいものじゃなくていいけど後宮では貧しい村よりまともな格好させてもらえると思ってたのに……)
「後宮なんてね、ネズが思うほどいい所じゃないんだよ!」
どこから持ってきたのかまたお酒を煽っている。
カチャ…カチャ……
ネコさんが盆にのせた簡素な食事を運んできた。
猿グツワと手首の紐がやっと解かれた。
「今日はそれ食べたらさっさと寝ちまいな。疲れて落ち窪んだ目は見たくないよ!
私は綺麗なモノだけに囲まれていたいんだ。」
婢女が食べるところと寝るところは離れの奥の別室だと教えられた。
私は食事を受け取り、別室で貪り食べるとその夜は倒れ込むように眠った。
眠りに落ちる寸前、姫様のさっきのあの言葉を反芻した。
『私は綺麗なモノだけに囲まれていたいんだ。』
確かに―――――
余裕がなくてすぐには気がつかなかったけど離れの入口や寝台に架けられていた薄布はシンプルだけど相当な上等品だ。家具や調度品も……
そして何と言ってもあの薫り……………