第3章 cute aggression
それから数年後、なんだかんだ引っかかる事はあっても、結局何も言えずお互い卒業し、就職して、同棲の話にまで発展してしまっていた。どうせこの人以外私に興味なんか示さないし、これから先いい人と出会えるかなんて分からないから、彼に別れを告げることなんかできなかった。
少しだけ私が我慢すれば、余計なことをしなければ。私はこの人を好きでいれる、一緒になれるという結論がでた。友達や周りの人にはやめとけって言われたけど、もう引き返せないところまで来てしまっている。
住むアパートも決まって、来月から同棲を始めることになった。これから先、一緒にいる時間が長くなる。もっと縛られて行動範囲は狭くなるかもしれない。それでも良かった。彼も私も幸せでいれるように、努力が必要。でもなるべく避けたいから、注意を払って生活しようと決めた。
「同棲楽しみだなー」
家具屋でテーブルやらカーテンを見ながらそんなことを口にする碧。私も楽しみと応える。
「なんかあっという間だったね。同棲するまで」
ずっと同棲したいって言い合ってたのがついこの間のように感じる。あと5年後くらいにはしようって話してたのに、もうその時が来たんだって思うと時間はあっという間だ。
「同棲したら澪のこと閉じ込めるよ」
「すぐ怖いこと言わないの」
たまにこんな怖い発言をする。ほんとにそんなことされたら溜まったもんじゃない。さすがに冗談だろうけど。
「俺に閉じ込められるのいや?」
「いやっていうか…仕事行けなくなっちゃうし。お金なくなっちゃうよ」
彼の反応を伺いたくて、ちらっと見る。それに気づいたみたいで目が合った。
「さすがに冗談だよ。閉じ込めたいってのは嘘じゃないけどね」
結局閉じ込めたいのかよと内心悪態を着くけど、思っていない限り実際にそんなこと口に出来るわけない。