第1章 生意気殺し屋と溺愛殺人鬼
時折唇が重なる。もう顔は涙でぐちゃぐちゃだと思う。見せたくない。こんな顔。
「そうだ。僕、君の名前知らないや。名前、教えて?」
途端に止む腰の動き。
「あんたに、教える義理なんて………っ、それ、やめっ」
今度は両脇に手が伸ばされてゆっくり揉んでそれがくすぐったくて余計に彼のものを締め付けてしまう。
「いまきゅうってナカ締まったね?きもちーんだ。」
いやなら早く教えて?と手はとめないまま耳元で囁いた。
「…………澪。」
「よく聞こえない。もう1回言って。」
「澪!!、言ったでしょ……っ、だからそれ、やめ」
悔しいけどもう抗えなくて彼の望みを受け入れるしか無かった。手は離れた。
「じゃあ僕の名前は知ってる?」
「霧島碧」
「うん。合ってる。」
ターゲットだったわけだから。名前なんて嫌でも知ってる。次の瞬間、手首に嵌められていた手錠が音を立てて外れた。もう終わった?と安堵した。
「まだ終わりじゃないよ。」
優しい声で言った。でもそれがよけいに恐怖心を煽ることを彼は知らない。
「澪ちゃん、ねえ………。」
彼は私の名前を呟いた。
「ねえ澪ちゃん。もっと酷いことしてもいい?」
「酷いこと…………?」