第16章 忠誠を極めた攻略者
「今日はこのまま眠れ。こうして、私が傍に居る。」
「はい。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
心地いいその温もりに抱かれ、私は再び意識を失くした。
「・・・間に合って本当に良かった。おやすみ、アメリア。」
翌朝、目を覚ますと上半身裸体のシェラザード様。思わず目が点になる。確かに、今は夏始め。
私は自分の身体も見て、ちゃんと服を着ている事が分かって安堵した。
「おはよ・・・アメリア。」
掠れた声と、甘い瞳のシェラザード様に私の心は鷲掴みされた。色っぽい!!
「シェラザード様・・・惚れてしまいそうです。」
「今でも十分私に惚れているだろう?」
「そ、それはそうですけど。あ、おはようございます。」
シェラザード様の目が細められ、大きな手が私の頬に触れる。その指先が唇に触れ、やがて口付けされた。
「嫌なことを思い出させるが、今日は最終日の試験だ。アメリアなら心配ないだろうが、準備の為にそろそろ起きないとな。」
「シェラザード様は・・・心配ないですよね。あの・・・。」
「昨日のことなら、試験が終わってからだ。先に試験を滞りなく終わらせよう。」
そして、朝食。ハッキリ言って気まずい。それに、誰だ?シェラザード様との同衾を許したのは。いや、何もなかったけど。
で、メアリー・・・どうして、そう頬を赤くしているの?
お母様、相変わらず和食が好きですね?暑くなって来た時の、卵豆腐は格別ですが。
お父様も、隠しているようですけど見えてますからね?美味しそうなポテトフライを。
シェラザード様は・・・親子丼を具とご飯を別々にした料理を嬉々として食べてらっしゃいますし。まぁ、丼として出さなかっただけいいのでしょうが。
「アメリア、これは?」
「海藻です。ライスに乗せて一緒に食べるものです。」
前世で瓶詰めで売られていたあの海苔である。恐る恐る食べている姿が可愛いです。
「こっちは?」
「それは、キュウリのピクルスみたいなものです。」
これも、前世でよく目にした漬物である。
「アメリア、この黒いのと粒粒は?」
「これもさっきとは違う海藻で、粒粒は魚の卵です。佃煮と言ってライスと共に食べます。」
増々、侯爵家の食卓がガッツリ和食になっている。漬物や佃煮を食べる貴公子って。
その後の馬車の中。
「アメリアのところの食は、珍しいものばかりだな。」