第16章 忠誠を極めた攻略者
でしょうね、としか言えません。
「だが、今日は天婦羅は無いのだな。」
「えっ?」
「あ、いや、余計なことを言った。すまない。」
そっか、前回はお替りしてたもんね。でも、朝から揚げ物って・・・。
「あ、今のは完全に私の失言だ。さっきの料理が嫌だという訳ではない。十分美味しかった。」
私が黙ったから、気を悪くさせたと思ったのだろう。珍しく必死に言い繕うシェラザード様。
「次の機会には、お出しするように言っておきます。」
「その・・・うん、ありがとう。」
本当に可愛い人だ。
「それから、お父上が食べていらっしゃった、あの細長いものは何だ?」
「えっ?あ・・・シェラザード様もお気づきでしたか。」
お父様、皆にバレてますよ?
「ポテトフライです。それも、今度、お出ししますね。」
「楽しみにしている。」
16歳って、いっぱい食べたい時ですものね。
学園は、いつもと何ら変わらぬ風景。その事に安心しては、教室へと向かう。
最終日の今日は二教科。
そして、滞りなく終えた後、私とシェラザード様は超ロイヤルスマイル顔の兄王子直々に呼び出されました。
シェラザード様でさえ、眉間に皺が集まっています。向かった先は、生徒会室。室内には、あの王子の姿もあった。
「僕も多忙な身でね、直ぐに話しを始めさせて貰うよ。さて、昨日の事だけど。あの者の処遇は、子爵家に連絡したらどんな罰を与えてもいいと言ったからその通りにしたよ。あ、どうしたか知りたいよね?あの者は誰かと同じ女に執心していたから、平民に落として寂しい貴婦人の相手をする所に送り込んだ。それから、囲っていた女は国外追放にした。以上だよ。」
何でもないように、二人の事を話してくれた。
「承知いたしました。」
えっ、シェラザード様それだけ?王子は、苦い顔をしたままだけど何も言わない。
「サザライト嬢、怖い思いをしただろうけど、僕の決断に不服はない?」
「いいえ、不服など。」
「そう、欲が無いんだね。では、二人は帰っていいよ。」
シェラザード様を見ると頷いてくれたので、二人はシェラザード様と私でいいのだと理解し生徒会室から出た。
そして、口を開こうとした時、大きな鈍い音と机や椅子が倒れるような音が辺りに響いた。
怯えた目をシェラザード様に向けたけれど、ただ首を横に振るだけだった。