第16章 忠誠を極めた攻略者
そして、私はその後も定期的に呼び出しを受けた。その度に、否定する言葉を言って来たのだけど。
落とし物として届けて来た人のことを聞いたけれど、いつも違った人らしい。共通点もなく、私は疑問に思いつつも今日も一人で教室に戻るのだった。
教室の中には、令嬢に勉強の説明をしている光景。これも、見慣れて来た。今は何の思う事もなくシェラザード様の隣りに座った。
「今日もか?」
「はい。」
これも、恒例になりつつある。でも、今日は違った。
「サザライト様って、そんなに頻繁に落とし物をされるのですか?少し注意力が散漫なのでは。」
明白な嫌味ではなく、至って普通の物言い。そして、否定してくれたのはシェラザード様だった。毎回、私の物では無かったと言ってくれた。
「可笑しいですね?どうして、その人たちはサザライト様の物だと思ったのでしょう?」
考えてみたものの、理由など分からない。そして、届けられる先生も、毎回違うのだ。
ちなみに、今回で5回目となる。
「アシュリー様、よくわかりました。勉強を見ていただきありがとうございました。」
令嬢は笑顔で、自分の席へと戻って行った。
「次は私も付き合おう。」
「ですが、ただ先生のところに行くだけですし。」
「甘えろ。いいな?」
分かりやすい気遣いである。私が頷くと、納得してくれた様だった。
が、その後、暫くは何事もなく、試験が始まった。日程は三日間。その二日目に、今度はシェラザード様が呼び出された。
私は教室で待っていることになり、始めは賑やかだった教室もやがて誰もいなくなった。
「あ、良かった。まだ残ってて。」
振り返った先に居たのは、王子の学友の一人だった。話しなど、一度もしたことはない。見た目は人当たりのいい雰囲気の男性だ。
「以前、授業で書いた作品を美術室に取りに来るように言ってくれって先生に頼まれたんだ。クラスが変わったから、俺がたまたま頼まれて。」
「分かりました。わざわざありがとうございました。」
「先生が予定があるそうだから、早めに取りに来て欲しいって言ってたよ。じゃあ、伝言は確かにしたからね。」
拍子抜けするほど、アッサリといなくなった攻略者の一人。さて、どうしよう?この世界にスマホなど存在しない。
あ、メモを残せばいいか。