第14章 狙われた貞操
「兎に角、折角来てくれたんだから、中に入って。」
渋々と中に入った私たち。そう言えば、この前の会話を聞かれているなんて二人は知らないだろう。私の方は、かなり居心地悪いですが。
「シェラ、来てくれたんだ。この書類を頼む。サザライト嬢は、シェラの手助けをしてくれ。」
王子は普通の対応だった。穴が空きそうな程、私を見ている主人公のことは敢えて無視し二人で離れた場所に陣取った。
書類を見て見れば、目安箱的なアンケート。生徒からのお願いの言葉が書かれていた。その内容に目を通し、優先順位を付けて行く。
30分程の時間が過ぎ、私たちの元に笑顔の主人公が近付いて来た。宇宙人の主人公につい身構えてしまう。
「サザライト様、休憩の為に皆さんにお茶を用意しようと思うのですが、お手伝い願えませんか?」
「いや、私たちは帰る。」
返事したのはシェラザード様。主人公は一瞬驚いた顔したけれど、笑顔は絶やさずお茶だけでもと勧めてくる。
でも、シェラザード様も引いたりしない。流石である。
「さ、作業もまだ続きますし、ほんの少しお付き合いを・・・。」
「作業なら全て終わった。故に、私たちは帰る。ロイド、作業は終わったから書類はここへ置いておく。」
「えっ、もう?」
「二人でやれば、そう時間は掛からない。トルン様、失礼します。」
兄王子は王子をチラッと見たけれど、帰ることを反対しなかった。でも、明らかに帰したくないと焦るのは二人。
王子はシェラザード様に何とか留まるように、引き留めている。私も主人公に、ここは通さないと言われているかのように通路を遮られている。
シェラザード様は何も言わず、兄王子を見ている。その意味を理解した様で、王子に帰すように告げた。でも、何故か王子は引かない。
「ロイド、二人を帰せ。命令だ。」
それは、初めて見た低い声。王子は青い顔をして、身を引いた。でも、主人公だけは違った。流石、宇宙人だ。
「私が取り寄せた凄く美味しい紅茶とお菓子があるんです。だから、せめてそれだけでもっ!?」
今、兄王子が主人公の目の前に立ち、表情が抜け落ちた顔で見下ろしていた。
「ロイド、連れて行け。次は無い。」
「は、はい、兄、いえ、生徒会長。」
怖くて固まったままの私。それを解きほぐすように、シェラザード様の手が私の手を掴んだ。