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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第13章 憂いの理由


「どちらかと言えば、トルン様の方だ。あの方は、そう簡単に自身を身売りしたりしない。」

ってことは、間違ったら王妃?

「週末、ウチに来い。その意味、分かるな?」

あの兄王子なら、シェラザード様の一族のお披露目前に何か対策を講じて来そうだ。

「し、週末で・・・間に合いますか?」

きっと、今の私は声が震えている。一度に色んな情報が頭の中に入って来てキャパオーバーだ。

「・・・その時くらいまでは、何とかする。」

たった数日だ。でも、その数日で色んなことが覆されたら?シェラザード様は、その数日しかない期間を何とか私の決心する大切な時間として考えてくれている。

「あ、あの・・・。」
「そう不安そうな顔をするな。まぁ、ロイドが馬鹿な真似をしなければ、あの方を刺激することは無かったのだが。今更それを言っても無駄な事。」

だったら、王子に全力で拒否すればいいですか?今更、何って女々しいことしているんだって言えばいいですか?

ううん、もう・・・その時は終わってるんだよね。

「シェラザード様・・・私は、もしもでさえ嫌なんです。だから、私もちゃんと決心しますから、私をお願いします。」
「あぁ、お願いされよう。」

そう言えば、そうなったとしたら・・・主人公があの王子と結ばれるのかな?

「ほら、戻るぞ。」

指を絡められ、教室へと戻る私たち。

「許されるなら、ずっとシェラザード様に抱き付いていたいです。」
「ん?許可など不要だぞ。」
「私、声に出てました?」

何って事を言ってしまったんだ。恥ずかしいにも程がある。幾ら、心細くなったとはいえ。

あんなことを言ってしまったからなのか、授業を受ける時でさえシェラザード様の距離は近かった。

放課後、王子と主人公に遭遇した。つい、身構えてしまう。それに気付いたのか、私の手をそのまま引き寄せ抱擁される。

そして、色んなところに口付けの嵐だ。でも、今の私は恥ずかしいと思う以上に、嬉しいのと安堵する気持ちの方が大きかった。

だから、シェラザード様にとびきりの笑顔を向けていたのだと思う。あの王子が、熱を込めた目で私を見るほどに。

おずおずと私もシェラザード様の体に腕を回す。

あ・・・今、シェラザード様はこんな優しい目を私に向けてくれるんだ。良かった、勇気を出して。

だから、声にならない声で告げたんだ。



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