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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第13章 憂いの理由


私の手には強く握り締められたタオルと、冷たい飲み物。存在を忘れていた。薄っすらとかいた汗を拭い、冷たい飲み物で喉を潤すシェラザード様。

表情は全然、通常運転では無かったけれど。

「タオルと飲み物、ありがとう。」
「い、いえ・・・。」
「教室からアメリアの視線を感じていた。」

そう言えば、そうだった。

「・・・アメリアには、知られたくなかったのだがな。」

ポツリと呟いたシェラザード様。

「私も・・・知りたくはなかったです。でも、偶然とは言え知ってしまいました。」

シェラザード様に抱き締められた。仄かに香る、いつもの香水の香りがする。

「・・・別荘で、ロマンチックに夜伽を遣りたかったのだがな。あの二人のせいで水の泡だ。」
「シェラザード様は、王子は本当にあのようなことを?」

少しの間の後、口を開いた。

「今のロイドの心の中を占めているのは、あの令嬢ではなくアメリアだろう。」
「えっ?私ですか?」
「この短期間で、更に美しく聡明になった。その手助けをしたのが、私ならば嬉しいのだが。ロイドは、惜しくなったのだ。今のアメリアを見て。」

惜しい?あんな拒絶しておいて?って、私がされた訳じゃないけれど。あんなに迷惑そうな顔を散々してきて?それなのに、今更?

「まさかと思いますが、声を掛ければ私がまた思い直すと思われているってことなのですか?」
「あの令嬢はな。ロイドは違っただろうが・・・あの令嬢に唆されて、段々その気になって来ていた矢先の昨日だ。」

あぁ、眩暈しそう。

「それに、王族に名を連ねるならばその準備も必要になる。それを、元平民のあの令嬢がそう簡単に修められるとは思わない。」
「だから、難しいことは私に?」
「だろうな。厚かましい願いだが。それに、焦っているのだろう。」

焦る?まだ16歳だけど。卒業間近とかなら未だしも。何故?

「あの令嬢が、ロイドの心が離れつつある事に、薄々と気付いているからだろうな。身分的に考えても、侯爵家のアメリアの方が条件がいい。」

私は怖くなって、シェラザード様にしがみついた。嫌だ・・・絶対に王族とだなんて。

「正直に言って、ロイドのことはそう気にしなくていい。」
「どうしてですか?」
「あの二人は、床を共にしている。」

はっ!!?既に、夜伽が終わってる?王族なのに?
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