第13章 憂いの理由
規定分の刺繍を早くに終わらせ、こんな時にスペックあって良かったなんて思っていたのだけど。先生も先に終わった人から、授業は終わりだと聞いて早々に教室を出た。
タオルと飲み物を持って、シェラザード様がいるであろう広場へと向かう。その途中で、耳に入ってきたのは聞き覚えのある声だった。
この声は・・・王子と、主人公?どうしてこんなところに?主人公は今日は休みだと聞いたのに。
「だから、私は気にしないと言っているではないですか。それに、私の代わりに色々とやってくれる存在なのでしょう?ならば、尚更です。」
主人公の声は通りやすい声だから聞こえやすいけれど、王子の方は聞き取れない。何の話しをしているのだろう?
「ですが、欲しいのでしょう?ずっと、気にしているではないですか。それに、王族なら側室を娶るのは反対されないはず。」
ん?側室?本当に何の話し?
「私が正妃になって、私のフォローをサザライト様にして貰えるならば、側室として迎え入れることに反対しないと思っています。」
はっ?私を側室?
「早く手を打たなければ、兄王子に取られてしまいますよ?あの方の奥方と言うことは、未来の王妃です。そうなれば、サザライト様は雲の上の人になってしまいますよ!!」
兄王子?王妃?えっ?
「以前のサザライト様を知りませんが、元々、ロイド様を好きだった訳でしょう?それなら、王族としてサザライト様を迎えると言えば、婚約だって無かったことに出来ますよ!!」
思わず声を上げそうになった時、誰かの手で口を塞がれた。そして、視線だけ向ければ・・・思い切り眉間に皺を寄せたシェラザード様がいた。
人差し指を口元で立てるジェスチャーに頷く私。気付かれることなく、私たちはその場から立ち去った。
ねぇ、主人公はもうそこまで王子と仲が煮詰まってるの?まぁ、そのことはどうでもいいのだけど。で、主人公が正妃で私が側室?何それ?
それに、兄王子も私を?もう、頭の中はパニックです。更に、自ら正妃になって、執務は私にさせようとしてる主人公って・・・。
何様なの?自分が楽したいから、妥協案として私を側室にしろと言ってる。正妃が元平民で伯爵令嬢。それより身分が上の侯爵令嬢を側室にだなんて聞いたことがない。
「・・・リア、アメリア?」
「シェ、シェラザード様。」
「一先ず、そのタオルを貰っても?」
