第12章 鋼メンタルの宇宙人
でも、何とか思いとどまる。
「はい。ありがとうございます。シェラザード様。」
「いや、私を頼って来てくれたことは嬉しい。ほら、教室まで送ろう。」
戻った教室の中には、主人公も王子も王子の学友もいなかった。その事にホッとする。
「アメリア、大丈夫か?」
「はい。あまり愉快なお話しではないのですが、後で聞いて下さいますか?」
「愉快だろがそうでなかろうが、アメリアの話しならいつも聞く。それでも、その時までにどうしても我慢ならなくなったら、私の名を呼べ。いいな?」
私は、はい!!と元気に返事をすると、シェラザード様はこめかみにキスしては戻って行った。
つい、今のは思わずホロリと来そうになった。
授業ギリギリになって、王子たちは戻って来た。主人公は、さっきとは違う雰囲気の血気盛んな様子。どっちにしても、いい印象じゃない。
さっきのは、私を呼び出してシェラザード様に邪魔されないで話しでもしたかったのかも?でも、どうして王子と仲直りさせようとするのか分からない。
主人公の仲良くしたいと言うのも然りだ。主人公は、王子のことが好きではないの?普段、あんなに仲良さそうにくっついているのに。
仲直りさせて、私に何をさせたいのか理解できない。おっと、授業に集中しなくちゃ。次は、何も起こりませんように。
拍子抜けするほど、次の授業は何も起こらなかった。
元々、私に宇宙人の考えていることなど理解出来ないし、しようとも思わない。本当に関わって欲しくない。
でも、これは何?
次の休み時間は昼休みだ。今、教室から出ようとした私を遮るように、王子が立っている。何度か避けて、通り過ぎようとしたけれど無駄足になっている。
かと言って、何か言葉を発する様子もない。こんな時、思い切り突き飛ばす事が出来ればいいのだけど、残念なことに相手は王子だ。
少し離れた場所には、こっちを見て両手を握り締めている宇宙人と学友たち。一体、何がしたいんだ?何を応援しようとしているんだ?
だから、私はさっきの言葉を思い出して、笑顔を浮かべた。王子の顔が、喜色に染まる。でも、私の視線は王子にではなくその背後。
振り返った王子のその隙に、私は足早にいや、もう走っているかもしれない速さでその横を通り過ぎてはシェラザード様の教室へと向かった。