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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第12章 鋼メンタルの宇宙人


一瞬、その行動に出遅れた王子だったが、後を追って来る足音。そりゃあ、追い付かれますよね。コンパスの長さが違うんですし。分かってましたよ?分かってましたけど、またダンマリですか。

そして、再び笑顔を浮かべた私だったけれど、王子は振り返ったりしなかった。でも、王子の体をやんわりと押し退ける動きに戸惑う顔を浮かべた。

今、目の前にはシェラザード様がいる。私の頭を撫でてから、王子の方に目を向けた。

「で、私のものに何か用か?」

瞳孔が開いたその瞳に、王子は息を飲む。こんな顔を見せたのは、きっと初めてなのだろう。

「この行動にどんな意味があるのか知らないが、今のロイドを動かしたのはあの者で間違いないか?」

鋭い目が、王子の背後にいる主人公に向けられた。王子も主人公も、学友たちでさえ恐怖に顔色を変えた。

この時になって、初めて主人公は身に染みたのかもしれない。シェラザード様は怖い人だと言うことを。決して、公爵家の名だけではなく、シェラザード様個人の存在感を痛いくらいに味わったのだ。

でも、元々自由に育ってきた平民だ。声は震えていたものの、主人公は口を開いた。

「ロイド様が・・・どう・・しても・・思って・・・だから、私が・・・。」

その瞬間、主人公の体が吹っ飛んだ。吹っ飛ばしたのは、シェラザード様でも王子でもなく、学友の一人で攻略キャラ。確か、この先、騎士団に入隊する子爵家の御曹司。

そして、この令息は、王子を崇拝し揺れることのない忠誠を誓っている設定だった。だから、ゲームで私を断罪する時に、私を力づくで押さえつけ王子に止めをさせたのだ。

王子にとって知られては不味い案件だったのだろう。だから、力業で止めた。それによって、令嬢がどんな怪我を負うことになろうとも。

辺りに悲鳴が上がる。力任せに殴り付けた令息は、褒めて欲しそうに王子を笑顔で見た。でも、肝心の王子は驚いた顔をしているだけ。

主人公は、ピクリともしない。

「何、これ・・・。」

こんなこと、ゲームにはなかった。だって、あの令息だって、攻略キャラだ。二人がハッピーエンドになっても、こんな・・・。

「見るな。」

シェラザード様の胸に閉じ込められる。

「フラン、保険医を頼む。」
「分かった。」

私の背後から聞こえた声はフラン様のものだったけれど、いつもの声色ではなく真面目な声。




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