第9章 王立図書館
「アメリア、遅くなってすまない。大丈夫か?」
「はい。助けていただいてありがとうございました。」
「当然だ。アメリアは私の恋人でもあるのだからな。」
今、キュンってした。単純だって言われるかもしれないけど、こんな時に婚約者ではなく恋人と言われるとは思わなかった。
「その本は貸出して貰って、今から外へ行かないか?」
「はい。」
外はいい天気だ。一日中、建物の中で籠るのは勿体ない。本を手にしては、二冊重ねて持ち直すシェラザード様。
空いている片方の手に、私は自ら握り締めた。その行為に、柔らかい微笑みを浮かべ、しっかりと握り返してくれた事に私は安堵の息を吐いた。
「後で甘やかしてやるから楽しみにしていろ。」
そう、小さな声が私だけの耳に届く。きっと、今の私は赤面中だろう。
手を引かれ貸出しのカウンターへと向かう。貸出しをシェラザード様がしてくれ、屋敷に届けるようにまで手配してくれた。
図書館を出て、近くの公園を二人で歩く。気持ちいい風と、青葉の香りが鼻を擽る。
「ほら、あそこだ。」
指さした先には、大きな木。その下には、色んな物が準備されていた。これが公爵家の権力の片鱗?
まさか、シェラザード様がここまで用意してくれているとは思ってもみなかった。美味しそうなお弁当と温かいお茶まで並んでいる。
公爵家メイドの2人がお膳立てしてくれ、私たちは食事を楽しむことが出来た。
「アメリアの口に合うか?」
「はい、美味しいです。」
「それなら良かった。」
ただ、シェラザード様の距離が近いです。こんなに肩を寄せ合って食事するものでしょうか?これは、あれですか?さっき言っていた、甘やかすということでしょうか。
一通り食事をしてから、食後の紅茶を飲む。あ~、至福の時間。公爵家の令息なのに、私に甲斐甲斐しくお世話してくれる。
「とっても美味しかったです。ありがとうございます。」
「では、これからはアメリアを甘やかす時間だ。ほら、私の胸に来い。」
えっ?今から?ここで?
「あ、あの・・・歩きませんか?その・・・人前ではちょっと。」
だって、会話が聞こえる距離じゃなくても、少し離れた場所にいるメイドさんたちがいるのだから。
「分かった。では、行こう。ほら、手を。」
引っ張り上げられた私は、勢いよくシェラザード様の胸に飛び込んでしまった。