第7章 魚を狙う猫
しかし、美人だ。大抵の令息なら、この美人から微笑まれたら付け居られると思うのだけど。女の私でも、見惚れるほどの美人だし。
「それに、身分も申し分ない。両家の両親も揃って、この縁談を喜んでくれた。そして、私自ら口説き落とした。」
「シェラザード様自らですか?でも、彼女は・・・。」
「女王蜂という異名か?私は気に入っている。蝶などよりずっと私好みだ。では、時間は有限だ。これで失礼する。」
私は手を引かれ、いつものベンチへと向かった。
「気分を害させたな。」
「いえ、ただ・・・美人だなと。」
「らしいな。」
他人事な物言いだ。
「女王蜂より蝶の方が良くないですか?」
思案するシェラザード様だったけれど、ポツリと呟いた。
「針で毒を注がれたのかもな。」
えっ、毒?
「一生懸命だっただろう?私に取り入る為だけに。だが、女王蜂は違った。あんな何気ない会話を令嬢としたのは初めてだ。」
「そう・・・でした?」
「そうだ。あの状況で、大好物と言って残念な顔をするのは、アメリアくらいのものだ。きっと、他の令嬢なら喜んで差し出すだろう。」
そう、なのかな?そうなのだろうな。シェラザード様は・・・私に甘えてる?
「あ、今日からパンの数を増やしました。たくさん食べて下さいね。それと、料理のことお父様に進言して頂いてありがとうございます。」
「もう他人ではないからな。」
そう、お父様に直談判してくれたんだ。家同士の婚約が整った後。お父様は苦笑いしていたけれど、認めてくれた。
「この白いのは?柔らかいな。」
「蒸したパンです。中に肉餡など具材が入ってます。お口に合うといいのですけど。スープはコーンスープです。」
「んっ・・・これは美味い。」
ニコニコしてシェラザード様を見れば、柔らかい笑みを見せてくれた。
「そう言えば・・・コロッケって何だ?」
「はい?コロッケ?」
そう言えば、以前のスコッチエッグを思い出す。
「具材に小麦粉・たまご・パン粉をまぶして油で揚げたものの総称です。色んな具材を使います。」
「そうか。博識なのだな。」
いや、前世の記憶です。
「そう言えば、アメリアはかなりの読書家だったな。次のデートは、王立図書館はどうだ?」
「いいですね。」
「決まりだ。また、時間を調整しよう。」
第二回のデートが決定しました。