第7章 魚を狙う猫
昼休み、そう昼休みだ。今日は、あの現場を見たクラスメイトたちも浮足立っていた。今までとは違った、好奇の目。
王子はその場に居合わせたクラスメイトから話しを聞いた様で、何か朝から仏頂面だ。見たくなくとも、座席の兼ね合いで視界に入ってしまうから仕方ない。
教室の中では居心地悪くて、早々に教室から出た。すると、少し先のところでシェラザード様と・・・美人とのツーショットが見えた。初めて目にする令嬢だ。
背も高く綺麗なブロンド色の長い髪に、琥珀色の瞳。長身のシェラザード様と並んでも、何ら違和感がない。
えっと・・・私は何を見せられているのだろう?釣った魚に餌はやらない的な?あ、シェラザード様と視線が合った。
・・・合った視線が逸らされることがない。こんな状況の時、どうすればいいいの?睨む?違うな。怒る?これも違う。
悲しむでも泣くでもない。あ・・・シェラザード様が微笑んだ。私はそれに釣られて、自然と笑顔になった。
「アメリア、待たせた。」
「いえ、大丈夫です。」
私の前に差し出された手。そっと手を出せば、しっかりと握り締められた。
「あ、シェラザード様。私もご一緒させて頂いても宜しいかしら?」
美人からの申し出。でも、シェラザード様は、眉を顰めて明朗快活に容赦ない拒絶。美人もまさか、こんな簡単に拒絶されると思ってもみなかったのだろう。
「も、もうっ、シェラザード様ってば冷たいわ。折角のクラスメイトなのですから、私とも懇意にして下さらない?」
空いている片方の腕に触れようとして、サッと身を引いた。
「婚約者のいる男に、気軽に触れるものではない。貴族の令嬢ならば、当たり前に知っている事だろう?」
「婚約者・・・今、婚約者と仰いました?まさか・・・。」
確かに、昨日受理されたばかりの案件。知らないのも無理ない。で、今の私・・・頭一個分の上から、見下ろされている。この美人から。
「で、ですが・・・彼女はロイド様を・・・。」
「その噂のお陰で、私は上手く立ち回れた。初めて会った時から、私のアメリアは愛らしかったからな。」
「では、噂は・・・。」
呆然自失の美人。そっか、シェラザード様のクラスメイト。お似合いだなぁ。ただ、狙ってる感が半端ないけれど。
これか・・・これがシェラザード様が言っていた。前世でいう、ハイエナ的な?