第7章 魚を狙う猫
「頼みがあるのだが、結婚したら変わらず私にアメリアの手料理を振舞ってくれるだろうか?」
「えっ、公爵家には腕のいい料理人がいますよね?私は手習いくらいしか出来ないですし、失礼になりませんか?」
「一般的にそうだろうが・・・父上に話したら、好きにしていいと仰った。それに、一度食べてみたいとも。」
え、公爵家の当主に?口に合わなかったら、私・・・滅せられるのではないですか?
「き、機会がありましたら。」
「あぁ、楽しみにしている。」
今日思ったけれど、意外にシェラザード様はよく食べる。今まで足りなかったのだと気付いた。
「毎日作るのは大変だろう?次は、学食に行かないか?私がご馳走しよう。」
「学食・・・ですか。」
人の視線が気になって、一日目で止めた。
「紹介したい者もいるし、折角だから皆で食事したいのだが。嫌か?」
「・・・紹介していただくだけではダメですか?その・・・私が一緒では、お気を悪くされるかもしれませんし。」
「以前から口うるさく紹介しろと言われていたんだ。それに、気を悪くする者などいないから心配するな。紹介するのは私の縁戚の者ばかりだ。この先、付き合うことになるからな。」
そんなこと言われたら、断われない。要は、親戚に紹介したいって事よね?婚約者に親戚を紹介するのは、普通のことだろうし。
「分かりました。」
「少し毛色が違うのもいるが、基本的に悪いヤツはいない。ただ、ウチの縁者の結束は他所の貴族より強い。故に、アメリアを守ってくれるだろうから安心しろ。」
私の為?
「シェラザード様、男前ですしイケメンですね。私、惚れてしまいそうです。」
「いや、そこは惚れてしまったでいいのでは?」
軽い突っ込みがされました。
「ストッパー・・・かけなくていいのですか?」
「あぁ、好きなだけ私に惚れればいい。」
そう言ったシェラザード様は、素早く私の唇を奪った。
「好きだ、アメリア。」
私を見詰め愛の告白をしたシェラザード様に、私はストンと恋に落ちた。
「王族でないから、婚前交渉も問題ない。その内、全てを私のものにする。今から心の準備だけしていてくれ。」
そ、そんなこと熱を孕んだ目で言わないでください。釣られた魚の私は、どうやら一匹の猫に狙われている気分です。