第7章 魚を狙う猫
今日から、公爵家の馬車で一緒に登校。シェラザード様は、今の私のことを模範生だと言った。でも、私をエスコートするシェラザード様の方こそが模範生ではなかろか?
それにしても・・・今日も、綺麗な顔をしている。
あ、シェラザード様の肩が揺れている。どうやら、私が顔を見ていることがバレている。
「初めて、この顔に生まれて良かったと思った。」
「えっ?そんなことは・・・。」
「この顔に煩わしく思うことはあっても、良かったと思うことなどなかったのは本当だ。」
世の中の男性諸君から、全力のブーイングを受ける言い分だ。きっと、女性陣からも。
「だが、一般的に見て、私より王子たちの方が見目麗しいだろう?アメリアは、私で良かったのか?」
「何言っているんですか。シェラザード様の方がいいに決まって・・・ます。」
私、何かとっても恥ずかしいことを力説してしまった気がする。嘘ではないのだけど。
「そうか。ならば、自信を持とう。あの時は、強引に話しを勧めたからな。もし、アメリアの気が変わったら・・・。」
「変わりませんから。しっかり自信を持って下さい。でも・・・シェラザード様こそ、気が変わったなら我慢しないで言って下さい。」
急に立ち止まったシェラザード様。そして、私の左手を掴み、口元に寄せる。チュッと触れた柔らかい感触。
「シェラザード様、ここは学園です!!」
「知っている。だが、我慢しなくていいと言っただろう?」
「そういう意味で言ったのではなくて、あの・・・えっ。シェラザード様・・・。」
馬車を降り指を絡められ、そのまま歩き出したシェラザード様に引っ張られていく。手を繋いで仲良く登校。周りの視線を一手に集めたのは言うまでもない。
教室に到着。いつもなら、教室前で退散する。なのに、今日は教室の中にまで入って来た。私の指定席まで来ると、繋がれた手が離れた。
その事に、一先ず安心する。が、私の背中に腕が回され抱き寄せられた。そして、頭にキスを落とすシェラザード様。私は反応できず、固まったまま。
「昼休み迎えに来る。ではな。」
ニヤリと笑う顔を見て、ワザとだと察した。私があんなことを言ったからだ。気が変わったらなんて・・・。
教室内では、ギャラリーでさえ私と同じように暫くの間、固まっていたのは言うまでもない。