第6章 リベンジデート
「したのか?この女に、贈り物をしたのか?」
「殿下には関係のないことです。」
私からは、二人の表情は見えない。何かに対して、憤りを感じている王子と、通常運転のシェラザード様。温度差が激しい。
「何故・・・どうして・・・。」
呟くように何度も同じセリフを吐く王子に、一歩踏み出したシェラザード様。そして、王子の傍で囁くように何かを言った。
(あんな仕打ちをしておいて、今更、惜しくなりましたか?)
(な、何をっ・・・)
(どうか、私から女王蜂を奪うような愚かな真似をされませんよう。)
「では、殿下。次がありますので失礼します。」
私を先に店から出し、後ろ手で静かにドアを閉めたシェラザード様。王子の姿は見えない。
「次は、ここから近い。歩くぞ。」
「は、はい。」
「あぁ、そのネックレス・・・よく似合っている。」
褒められて、顔が赤くなる。本当に、こういうところもよく抑えているなと思う。そして、近いと言った次の目的地は・・・王妃御用達のスイーツ店だった。
呆然とする私を伴い、店内に入る。
そして、運ばれて来たのは、一日10食限定のスイーツ。キラキラした柑橘の果実がふんだんに使われたタルト。
「とっても美しいですね。食べるのが勿体ないくらい・・・でも、いただきます。あ~、生きてて良かったぁ。」
「クックッ・・・本当に愛らしいな。さて、私もいただこう。」
スイーツに夢中の私。さっき、恥ずかしくなることを言われたけれど、スイーツに夢中になることで平常心。ある意味、平常心ではないのだけど。
「アメリア、髪を食べている。」
そっと伸びて来た指先が、私の口元に触れる。
「シェラザード様、ここは学園ではありません。言ってくだされば自分で対処出来ます。」
「私と誤解されるのは不服か?」
「えっ?あ、いえ、不服とかそういうのではなくて・・・。シェラザード様に迷惑をお掛けしてしまうでしょうし、あの・・・決して、えっと・・・。」
シェラザード様は、じっと私を見てから口を開く。
「そうだな・・・婚約者同士ならば、問題はないか。」
「そ、そうですね。婚約者同士なら。」
「なら、私の婚約者になれ。」
えっ?婚約者?どうして、そんな話しになったの?
「私の容姿、好みだろう?」
そんなことはない・・・なんて、とても言えない私。