第32章 且つての楽園
そして一つだけ違うのは、この部屋にベッドがない。これは、きっとワザとですよね?でも、そこは仕方ないですね。
「あ、ここにいたんだ。シェラ、見て来たよ。」
「フラン。どうだった?」
「もぬけの殻の公爵家と侯爵家の屋敷に押し入って、呆然としてた。ついでに王宮を覗いたら、スタンバイされてたよ。まさに危機一髪?良かったね、アメリア。」
意味が分からず、ポカンとすると説明してくれた。
「万全の夜着で、アメリアが到着するのを待っていたみたい。連行して直ぐに既成事実を作る為に。」
「そんな・・・。」
「悔しがっていたから、きっと、探すかな?でも、ここはそう簡単に来られる場所じゃないし、ちゃんと魔道具が設置されているから外部から人は入れない。かなり強力な目くらましの魔法をかけているしね。」
そう言えば、この周りの立地は雪深い場所だ。そして、書物から考えれば、この土地へ到着するまでに一ヵ月は掛かる距離だ。
「それでも、あの王子は油断出来ないから、定期的に様子を見ておかないとね。」
「出来る範囲でいい。無理はするな。」
「分かってるよ。あ、アランも戻ってきた。」
ひょこっと顔を出したのはアラン様だ。
「ウチの一族だけじゃなく、侯爵家の系統にも兵を派遣してた。全て、無駄足になったけど。それと、あの手紙を国王に届けておいた。」
「そうか。母上の手紙を。世話になったな。さて、どう動くか、それとも諦めさせるか見ものだな。」
スケールが大きすぎてついていけない。シェラザード様のお母上の手紙というのは、実の兄に決別という内容なのでしょうか?
「あの・・・私の存在が、この様な結果になったのでしょうか?」
「それは違うよ、アメリア。元々、18になるタイミングであの国を出る事は決まっていたんだ。それが少し早くなっただけ。アメリアの責任じゃない。ねぇ?シェラ。」
「そうだ。まさか、その予定が二年早くなり、且つ、まさか私に婚約者が出来るとは想像もしていなかったがな。あ、後悔している訳ではないからな?」
でも、国王とシェラザード様のお母上は・・・。
「陛下は自分の子にだけ甘いから、母上はそれが気に入らないんだ。それに、母上の婚儀の時でも、自分可愛さに父上との仲を反対していた。」
「そ、そうだったのですか。」
自分が一番+自分の子が可愛い・・・いい人に思えない。
