第32章 且つての楽園
「僕もアランも、お祖父様が持っていらした絵画でしか見た事がなかったけれど、この国は楽園みたいだね。緑が綺麗で。ずっと、行ってみたいって思ってたんだ。無事に婚約者とも一緒に来られたし、嬉しいよ。」
そう言えば、皆さんには婚約者がいると聞いていた。ひょっとして、同じこの国の末裔?
「俺・・・早く結婚したい。」
まさかの結婚?それもアラン様が!?
「近々、アメリアに紹介するね?僕たちの婚約者。」
「はい、お会いしたいです。」
夜とは言え、この口は魔道具の恩恵で温かさを感じる街頭がたくさん設置されている。その光に照らされた街並みがとても綺麗で、私は暫しの間、その街並みに見惚れていた。
「そんなに気に入ったか?この風景を。」
「はい。とても素晴らしいです。」
「それは良かった。だが、そろそろ寝よう。明日の散策につかえる。」
シェラザード様の手に引かれて、私たちはベッドで横になった。
「・・・正直に言うと、ホッとしている。」
「えっ?」
「あの国がいいと言われたらどうしようかと思っていた。ここの地形は極寒の最果ての場所だからな。魔道具無しでは、この国は発展しなかった。」
確かに、極寒の土地では作物は育たない。
「シェラザード様、私に出来ることがありましたら何でも仰って下さい。」
「うん?そうか。ならば、アメリアの七輪や鍋料理をこの国で広めようと思っている。色々と、助言してくれ。」
まさかの提案である。え~・・・と言う目を向けたけれど、シェラザード様は本気らしい。
「この国の北部には海がある。凪いだ時には漁も出来るだろう。その時の使い道も知っているなら頼みたい。」
「承知・・・致しました。」
北国の魚って、美味しいものが獲れそう。ちょっとだけ期待してしまう私。
「この国では、王族と国民との距離が近い。末永く仲良くやっていきたいと思っている。だから、王妃になるとはいえそう気負う必要はない。」
そうらしい。昔から、この国は仲睦まじく国が栄えていた。色々とあったけれど、私は私を大事に思ってくれる人たちとこの国で頑張って行こうと思う。
且つての楽園と言われていた、この国で・・・。