第29章 罠と全力魔道具
伯爵家の一人の令嬢が兄王子に近付き、抱き付こうとした。令嬢の目は獰猛な獣の様な目で、兄王子に迫っていた。シェラザード様の腕が、私を抱え込む。
「シェラザード様?」
「王族は耐性があるから問題ない。だが、あの令嬢・・・。」
兄王子が逃げれば、令嬢は後を追った。護衛たちが止めようとするけれど、目はずっと兄王子を見たままだ。狂気に似たその眼差しを見てゾッとする。
匂いは相変わらず消えて無くならない。他にも、あの香水を使っている人がいるのかもしれない。
「シェラザード様、今日は私、大丈夫みたいです。耐性が付いたのですかね?」
「ん?あぁ、私の濃い体液がアメリアの中に残っているからだろう。」
「・・・はい?」
えっ?濃い体液って・・・えっ?
「この数日で月のモノが来る頃だろう?だから、避妊していない。」
小さな声だったのは周りの人に聞かれなかったので良かったけれど、私は目玉が飛び出しそうだった。
「だが、やはり濃い体液の効き目の方が凄いんだな。」
「あの・・・どうしてそれを?」
「メアリーに聞いた。」
身近に情報者がいた。
「出来たらそれはそれで私は構わない。早いか遅いかの違いだけだからな。」
もう、堂々とされ過ぎて反論するのも馬鹿らしくなる。
その後、匂いに当てられた人はそれなりに現れた。ハプニングはあったものの、ご挨拶は終わり私たちは広間を出た。
すると、声を掛けてきたのは騎士団の二人。どうやら、シェラザード様とは顔見知りらしい。王子たちと従兄弟同士だものね。
「ご同行されていらっしゃるサザライト様の体調が優れないとお聞きしております。部屋を用意しておりますので。」
私は意味が分からずキョトンとした顔。
「私・・・全然、元気ですよ?」
「えっ?ですが、その様に聞いておりまして・・・でも、お元気そうに見えますね。」
「あぁ、アメリアに体調不良の傾向はない。と言うことで、帰っていいだろうか。」
直ぐに引き下がってくれたので、私たちは馬車に乗って帰宅。取り敢えず良かった~。明日からは、シェラザード様と公爵家の領地に遊びに行く予定。
蓮根が採集されている様で、今から楽しみだ。