第27章 冬の聖夜祭
「うっ、背中が痛い。穴が空きそう。」
「えっ?ど、どうかしたんですか?」
「シェラが凄い目で僕を見てる。ハハ、でも・・・執着できるものが出来たのは僕は嬉しいよ。さぁ、最後にシェラともう一度踊っておいで。」
送り出された先にいたのは、シェラザード様だった。差し伸べてくれた手に、自分の手を重ねた。
「お話しは終わったんですか?」
「釘を刺しただけだ。」
連続ダンスは疲れました。幾らゆったりした音楽だったとしてもです。シェラザード様とのダンスが終わり、支えられながら軽食の場へと。
今、椅子に座ってはシェラザード様と軽い食事。
「誰かに誘われたりしなかったか?」
「ないですよ。」
「そうか。」
何か口数が少ない。王子と何を話したんだろう?
「気になるのか?ロイドと何を話したのか。」
「す、少し・・・。」
「なぁ、アメリア。最近、ロイドがアメリアを見ていたのを知っていたか?」
キョトンとした顔をすると、シェラザード様は笑った。
「気付いてないよな。アメリアは、私をいつも見ていたんだから。そう言う風に私が仕向けていたんだけどな。」
「それって・・・。」
「今のアメリアが好きらしい。だから、釘を刺して来た。」
吃驚である。
「アメリアは誰にも譲らない。例え、国を捨てることになっても。」
「えっ!?」
「あぁ、そうならない様に尽力はする。ただ、それくらいアメリアを思っているということだ。何せ、私の初恋だからな。」
えっ?初恋?
「クックッ・・・真ん丸の目。アメリアは私の分も、私を大事にしてくれるだろう?」
「ご自分でも、大事になさって欲しいです。」
「最低限のことは気を付ける。いざって時に倒れていたら、アメリアを守れないからな。」
それは優しくて愛おしいものを見る目だった。
ダンスが終わりバルコニーに出た。ホワイトクリスマスにはならなかったけれど、やはり冬だ。吐く息が白い。
冬の空に瞬く星々を見上げているシェラザード様。ギュッと抱き着いてみれば、それに応えてくれる腕。
「去年の今頃も、こうして星を見ていたけど・・・まさか、あの時はこんな気持ちで星を見られるとは想像もしていなかったな。」
「どんなお気持ちですか?」
「去年のことは、毎日が早く終わればいいとしか思っていなかった。でも、今がこうしてあるのなら悪くない。」
