第26章 突然の訪問
お父様は公爵家に滞在していて、暫く身を寄せる事を理由に断ったらしい。アッサリと引き下がってくれたらしいけれど、二度目の書簡が届き、いつ頃戻って来るのか確認されたそうだ。
返事としては、不明。娘に如何様な用があるのか聞いたらしいけれど、珍しい商品が手に入ったので一度目通りをしたいと言うものだった。
そして、私は明日侯爵家に帰ることになっている。当日、シェラザード様が着いてきた。それは想像の範囲内だ。でも、更に今回は・・・公爵様夫妻も同伴。
お父様と打ち合わせをする為に、来られるらしい。どんな打ち合わせがあるのか分からない。
たわいもない会話をしていると、侯爵家に到着した。すると、屋敷前に一台の馬車が止まっていた。私には見覚えがない。
シェラザード様にエスコートされ馬車を降りれば、その馬車の扉が開き人が降りて来た。
あ、あの寒い人だ。相手もシェラザード様がいることは想像していたらしい。でも、続けて降りて来た公爵様夫妻を見て驚愕していた。
そして、聞き逃さなかった。小さく舌打ちした音を。
公爵様夫妻を目の当たりにして、分が悪いと思ったのか今日は帰ると言ったけれど、それを引き留めたのは公爵様夫妻だった。
この二人に引き留められたら、断わることなど出来ないだろう。私も勿論拒否など出来ない。
でも、そこは商売人。人当たりのいい表情を浮かべては、一緒に客間へと向かったのだけど・・・。公爵様とシェラザード様は、お父様と打ち合わせがあるらしく別室に行ってしまった。
残されたのは私とシェラザード様のお母上。バクサーは商人らしく私たちの前に商品を並べた。それは宝飾が施された髪留めやネックレスなど女性が好むようなもの。
見た目はゴージャス。でも16歳の小娘が使う様な物ではない。それに、ゴテゴテしたのは元々好きではない。
やたら、直接触って見て欲しいと言われたけれど、シェラザード様のお母上がいるのに、私が先に触る訳にもいかない。というか、どれも好みじゃない。
それはそれとして、どうしてお母上は触れないのだろう?興味がないことはないと思う。今だって、宝石が付いた指輪や、キラキラしたダイヤのネックレスなども身に着けているんだもの。
「他の物はないのかしら?」
「ご夫人にはお気に召して頂けなかったようですね。では、サザライト嬢は如何でしょう?」
