第26章 突然の訪問
「あ、メアリーは?」
「直接触れていなければ大丈夫だ。」
「良かった。」
しかし、何ってものを贈り付けて来たんだろう。
「以前にも話したが、コーシュには愛人が多い。その中には貴族の未亡人などもいる。犯罪に手を染めるまではなくても、そのギリギリな事はやっている。そして、商売の拡大化で近い内に貴族の位が与えられると聞いた。」
「シェラザード様・・・嫌な予感しかしないのですが。」
「あぁ、その危機感は正しい。」
仮に正妻になったとしても、愛人が多数なんて前世で元庶民の私にはとても我慢できることではない。
それに、見た目は周りに綺麗な人も美しい人もイケメンもいるけれど、私の好みはシェラザード様だけ。
「コーシュから自主的に襲われる事はないだろうが、あの媚薬が理由で逆に迫られたら拒む理由がなければ受け入れるだろう。今までそうして来たように。」
「では、これは手始めにどれだけ私に効き目があるのか確認するものと言うことですか?」
「多分な。で、体調は変わらないか?」
もう一度考えたけれど、どこも変わったことはない。
「大丈夫みたいです。」
「そうか。」
「あ、でも・・・。」
そう、少し、ほんの少しの違和感。
「でも、何だ?どんなことでもいいから私には隠すな。」
「シェラザード様に・・・その・・・。」
「私にだけ・・・・と言うことか。」
抱き寄せられると、唇が重ねられた。顎を掴まれ口を割られれば、シェラザード様の舌が入って来る。何か、いつも以上にドキドキする。
そして、いつもより長いその口付けにすっかり取り込まれる私。この日、耐性を上げる為だと言い訳をしては、たくさん愛情を注いでくれた。
あの香水は、シェラザード様にお願いした。私には身に余るものだし、この事はシェラザード様からお父様に進言して貰った。
お父様ももし何かの不手際で、公爵家に泥を塗ることにならない事と私の身に危険がないように尽力すると言ってくれた。
二度目の試験の時期になり、私はシェラザード様と共に勉学に勤しんでいた。分からないことがあっても、直ぐにシェラザード様から助言が得られる為に勉強が捗った。
もう半分は、公爵家の人間になったかのようにこの屋敷に慣れて来た頃、お父様から公爵家にいる私に書簡が届いた。
内容は、屋敷に訪問の許可を願う届けが来たというものだった。