第22章 癇癪と殺意
乾いた笑い声が、教室内に響く。あぁ、この人は本当に怖い人だ。逆らってはいけない。
「お前は、この国に要らない。」
こんな瞳孔開いた人を二人も目にすることになるなんて。兄王子のお怒りを私なんかがどうすることも出来ない。でも、シェラザード様は・・・。
婚約者同士だから、不敬じゃないよね?そっと、シェラザード様の頬に手で触れると、吃驚した目が私に向けられた。その手を優しく掴まれ、キスされる。
苦笑いを浮かべるシェラザード様を見て、私はポロポロと涙を溢した。
「あ、悪い・・・えっと・・・。」
さっきまでの怒りは消えてしまった様で、焦った様子で私を宥めようとするシェラザード様。
「ごめん、アメリア。」
「殺されるのも殺すのも止めて下さい。」
「大丈夫だよ、サザライト嬢。そんな真似は、僕がさせないから。さ、王女、行こうか。これが僕の最後の慈悲だよ。」
王女相手に腕を掴んでは、有無を言わさず連れて行ってしまった。
同盟国に王女を送り返す経緯と、王女がやらかした出来事の詳細を100枚以上の書簡と共に送った。それに付随し、更に大激怒したシェラザード様のお母上が王宮に乗り込んで、実の兄である国王に理論攻めをして謝罪をさせたらしい。
そして、トドメとばかりに、次にアシュリー家に不利益を及ぼす事になったら、一族総出で他国に亡命すると言ったらしい。
更に、同盟はこの時を持って破棄された。向こうの国も、引け目を感じて何も言えなかったらしい。
その後の且つての同盟国はと言うと。
王女の元婚約者は、今回の行いを咎められ平民に。王女は、王都から離れた別荘で生涯隔離された生活を送ることとなった。
国に戻った王女が、癇癪で自身が女王になり国を担うと声高々に掲げれば、それに慌てた国王が12歳の息子を後継者にすると発表し王女は幽閉となった。
毎日、泣き叫び我儘を言い続けていた王女だったが、誰にも相手にされない日々を過ごす中、誰かの甘言で弟王子を亡き者にしようと画策し、病死と発表され人知れず処刑される事となった。
私がこのことを聞かされたのは、王女が処刑された数ヶ月の後の事だった。
そして、アシュリー家一族は、亡命する国を用意していて、いつでも行動可能だったことも事後に知らされることとなる。