第21章 瞳の中の熱
「ま、あのまま引き下がる人ではないだろうが。どう出て来るやら。自国と同じ様に、思い通りになると勘違いしなければいいのだがな。」
「そうですね。」
直ぐに授業が始まり、話しはそれで終わった。前世で言うなら、元カノの出現だ。王女は王宮に婚約者と滞在している。そこに呼びつけるなんて。
って、授業に集中、集中。
放課後、シェラザード様と共に生徒会室へと向かった。笑顔で出迎えてくれた兄王子。シェラザード様が、王女より誘いを受けていたことは知っていた。誘いに乗る必要はないと言ってくれた。
馬車へと向かう途中、そっとシェラザード様を見上げた。綺麗な顔・・・。私としては有難かったのだけど、どうしてシェラザード様よりあの人を選んだのだろう?
「そんなに私の顔が気になるのか?」
「あ・・・すみません。不躾に見詰めてしまって。」
「何故、謝る?私たちは婚約者同士だ。何の問題もない。余所見はダメだがな。」
それは、昼間の王女の婚約者のことを言っているのですか?
「アメリア、侯爵家にお邪魔してもいいか?」
「勿論です。」
「ならば、急いで向かおう。」
いつもの定位置にある馬車を見つけて近づいていくと、手前にある一台の馬車の窓が開いた。顔を出したのは王女。婚約者はどうやら・・・いない。
「随分、遅かったわね。早くこの馬車に乗りなさい。」
「お断りいたします。」
「ちょっ、待ちなさい。待ちなさいと私が言っているの。言うことを聞きなさい!!」
それはそれは、大激怒の王女様。心配そうな目でシェラザード様を見上げたのだけど、毅然とした表情は変わらなかったので私も気にしないことにした。
それにしても、身を乗り出してまだ叫んでいる。前世の私でもあんな恥ずかしい真似はしない。いいのか?同盟国よ。こんなのが王女で。
「えっ?シェッ!?」
馬車の前に到着すれば、シェラザード様に抱き寄せられ抱擁される。あ~、幸せっ!!って、そうじゃない。ここは人の目が・・・。
「アメリア?」
何この熱のあるアメジストの瞳。近い・・・と思った時には、口付けをされていた。
私は見られて喜ぶ性格はしてないんだけど!!でも、騒がしかった声は静まっていて、私はシェラザード様にエスコートされて馬車に乗り込んだ。
「さて、明日、どう動くやら。」
ニヤリと笑うシェラザード様の目は、とっても妖艶だった。