第18章 公爵家の領地へご招待
そう、二人揃ってソファーで一休み。シェラザード様に寄り掛かっては、深い眠りに落ちていった。
「ごめん、アメリア・・・。まだ、婚約者だと言うのに。」
シェラザード様の声が聞こえてきた気がしたけれど、私は爆睡することしか出来なかった。ただ見て回っただけなのに、物凄く働いた気がする。
一休みとしては短くはない時間を寝て過ごし、私は目を覚ました。ポーッとしたまま、隣りに目を向ける。
「休まったか?」
「シェラザード様、ずっと起きてらっしゃったのですか?すみません、重かったですよね。」
「気にするな。それに、私はこれくらいはいつものことだ。アメリア、父上がすまない。」
気遣うような目で私を見るシェラザード様に、私は首に抱き付いた。
「一緒にいられるのなら、何処であっても嬉しいです。」
「そうか。私もだ。ただ、アメリアには無理はさせた。」
二人でイチャイチャとしていると、呼び出された。何故か、公爵家のキッチンにいる。
そして、私たちの目の前には立派な牛肉が鎮座していた。ふだん、シェラザード様がステーキとして食べているものらしい。流石、公爵家です。
「それで、何用だ?」
「アメリア様ならば、ステーキ以外にどのようにこの牛肉ををお使いになるのかお聞きしたのです。」
シェラザード様は、隣りで難しい顔をなさっています。
「牛丼、あ、いえ、今のは聞かなかったことにして下さい。えっと・・・ビーフカツレツ・ビーフシチュー・カレー・すき焼きに牛丼、あ、今のはノーカウントで。」
元庶民なんだもの。牛丼が手軽だったんだよね。一度だけ食べたカツレツのサンドイッチはほっぺが落ちるかと思ったことはあったけど。
「シェラザード様、とんかつを食べたことは?」
「とんかつ?」
あ、これは知らない顔だ。基本的に焼くか煮るだもんね。確かに、焼いて塩コショウすれば大抵は美味しいよね。
「ステーキ、美味しいですよね?」
「牛丼とは?」
よりによって、そこが気になりましたか~。
「あ、簡単に調理するなら、あの麺つゆ使えますよ。」
もう、こうなったら自棄である。簡単に説明すれば、料理人さんたちは行動に移った。ウチのザビエルも優秀だけど、流石公爵家の料理人。行動に無駄が無い。
その間、私たちは用意してくれた紅茶を飲みながら、キッチンで指南中。