第18章 公爵家の領地へご招待
その後、シェラザード様は朝からガッツリ肉料理。私は定番のサンドイッチとスープにして貰った。朝からそんなに食べられない。その事に、逆に心配されましたが。
食事の後、私はシェラザード様に川へと連れられて行った。綺麗な清水が流れる山あいに山葵の沢があった。流石、湧き水が豊富な領地である。
青々しい緑の木々の中、そっと水に触れて見れば物凄く冷たかった。気持ちのいい癒される場所である。
「そう言えば、シェラザード様。お蕎麦はどうなりましたか?」
「あれなら、今、大量生産中だ。領民たちも喜んでいる。まさか、草だと思っていたものがあんな風に食すことが出来ると誰も思わなかったからな。では、池の方に行こう。」
美しいと言った池。何があるんだろう?飛んだ先には、大きな池があり辺り一面蓮の花が咲き乱れていた。
「綺麗ですね。」
「そうだろう?この時期になると、いつも咲く。」
「こんなにたくさん咲いていると、冬が楽しみですね?」
シェラザード様を見ると、えっ?という顔をしていた。私もそれを見て、えっ?である。
「冬には枯れてしまって、花は無くなるぞ?」
「そうですね。」
「ん?」
「えっ?」
何か、話しが噛み合っていない。
「私、蓮根チップ好きなんですよね。」
「蓮根チップ?それは何だ?」
「えっ?」
「ん?」
やはり、話しが噛み合っていない。
「あの花の根っこで作るお菓子です。美味しいですよね?」
「そうなのか?」
「ちなみにですけど、そこの竹林の筍はどうしてますか?」
「たけのことは?」
あ、何かやらかした気がする。目を泳がす私を、シェラザード様の顔が覗き込んで来た。
「つ、ついでなので言いますけど・・・山芋とかもありそうなのですけど。」
「山芋?」
「・・・。」
「・・・。」
お互い無言で見詰め合っている。
「あの、本気で言ってます?」
「あぁ、本気も本気だ。」
「あ、貴族だからそういうものを召し上がったりしないだけで、領民の方たちはご存知・・・かも?」
あちこちで領民の人たちに聞いて回ったけれど、誰も知っている人はいなかった。私の心の中は、勿体ないの言葉一色である。
森の中で実る果物などは食べていたけれど、水中や深い土の中のものは知っている人はいなかった。
それも、この領地が広く小麦や一般的な作物でそれなりに潤っていたらしい。