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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第17章 夏休みの始まり


枝には小さな粒が幾つも付いている、それを一粒取っては、手で潰し匂いを嗅いでみた。

「蕎麦の実?」
「そば?そばとは何だ。」
「えっ?麺料理・・・。」

荒れた土地にも育ちやすいって聞いたことがあるような?でも、匂いも見た目も蕎麦の実に似ている。

「シェラザード様の領地に水車はございますよね?」
「ああ。小麦を粉にするのに必要だからな。」
「では、この実だけを同じように粉として貰えませんか?」

短く、分かったと言って消えてしまった。

私はその間、大きな平たい桶と綿棒を用意して貰った。山葵擬きもこの世界で見つけていたし、海苔だって存在する。

大鍋にお湯を作って貰った頃、シェラザード様が戻って来た。ズタ袋っぽい袋に白い粉が入っていた。

「では、ザビエル、お願いします。さっき、説明した通りにやってみてください。」

本当ならお試しで私がやってみたかったのだけど、全力でやらせて欲しいと言われて諦めました。

と言っても、私も人生で一回しかやったことはない。それも、細さや厚みがバラバラでお世辞にも美味しいものではなかったのだけど。

ただ、このザビエルは探求心があって、勉強家であるし手先が器用だ。隣りでは、興味深そうにザビエルの手つきを見ている。

「今までは、これをどうされていたのですか?」
「刈り取っては捨てていた。」

勿体ない。でも、知らなければ草扱いも無理はない。可愛らしい花が咲くのだけど、貴族に好まれるものではないだろうし。

暫く、見守っていると、前世のテレビでもよく見たものに出来上がった。本当にザビエルのスペックが凄い。

そうそう、当家には麺つゆが常備ある。湯搔いている間、麺つゆと薬味を用意してくれた。

食べたことがあるのは私だけ。その事は言えないけど、試食して湯搔き加減を確認してから水でしめて貰った。

定番のザル蕎麦である。まず、ザビエルが試食。あ、目が丸くなっている。

「アメリア様、傑作です。どうぞ、ご賞味下さい。」

自分で傑作って言っちゃった。あ、シェラザード様がもう口に入れている。

「美味い。小麦とは違った味わいだ。それに、このピリッとした緑色のものもいい。」
「山葵って言う野菜です。シェラザード様の領地に、生えていませんか?湧き水が豊富だと言われていましたし。」
「湧き水?水の中に生えているものなのか?」



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