第17章 夏休みの始まり
さて、それから数日。屋敷に献上品が増えた。領民の間で、献上すると美味しい料理としてお裾分けがされると広まったのが原因だ。
そして、今、大量に献上された帆立に似た貝を見ている。当家の料理人のザビエルが、私を見ている。この世界では、貝柱を煮るか焼くくらいしかしない。ヒモは捨てるらしい。勿体ない。
だから、今回は先日のカワハギの様にヒモと貝柱を分けて貰って干した。前世と違って、五日程干せば完成する。
更に、生の貝柱を甘辛く味付けしては煮て貰ったのをお裾分けした。流石に、生食は躊躇われた。この世界にも、寄生虫がいるかもしれないし。
干した帆立がそろそろいい頃だと言うことで、これまた屋敷の中にで試食タイム。ヒモはお酒のお供にピッタリでお父様が強奪していった。ただ、
干し貝柱はスープに使った。あ、齧っても美味しい。口の中で旨味成分が広がる。
「もう一個。」
回収した籠の中から摘まんでは、口に入れようとして奪われた。二度目の訪問のシェラザード様によって。
「んんっ、これは美味っ・・・美味しい。」
あ、言い直した。傍にメアリーがいるものね。
「また、会いに来た。」
「嬉しいですけど、突然は驚きます。」
「ん?お父上には報告はしておいたのだが。」
もう、シェラザード様の扱いが家族同様になっていませんか?そして、メアリーも当たり前に干し貝柱のスープを渡しているし。
「アメリア、是非、これを持ち帰りたい。」
前回も、持ち帰りましたものね。ご家族で食べるくらいなら構いませんが。でも、今日のシェラザード様の顔を見て、薄っすらと隈が出来ていることに気付きました。
「あの・・・お忙しいのですか?」
「ん?あぁ、まぁ、な。」
歯切れが悪い。会いに来てくれるのは嬉しいけれど、少しは体を休めて欲しいとも思う。そう言えば、初めて会った時倒れていたし。
「ご領地のことですか?」
「最近、雑草の成長が激しくて、小麦の生育が悪い。」
「雑草・・・ですか。」
私は頭の中に、海外からきた黄色い花を咲かせるアレを思い浮かべていた。
「どのようなものですか?」
「ん?あ、少し待っててくれ。」
突然消えて、直ぐに現れた、心臓に悪いので、突然は止めて欲しい。
シェラザード様の手には、一mほどの高さがある何処となく見覚えのあるものだった。