第17章 夏休みの始まり
両親が帰って来ると、どうやらシェラザード様が来ることは知っていたみたい。知っていたのなら、教えて欲しかった。
あぁ、もう取り繕うのは気にしないことにしたと?確かに、今更ですけどね。
夜は揚げ物を用意すると言うと、シェラザード様は凄く喜ばれたんだけど・・・初めて見た串揚げの具材を見て、怪訝な顔をされた。
「これは、天婦羅ではないよな?」
「はい。串揚げと言う料理です。」
料理と言っていいのか疑問だけど。まぁ、いいでしょ。ついでだから、ポテトフライもお願いしておいた。
領地で作った藻塩や、抹茶塩を付けて試食。お父様はご機嫌でワイン片手に食べている。
「うん、美味しい。この藻塩というのもいい。」
「アメリア様、串揚げがご用意出来ました。」
細長いお皿に並べられた串揚げの数々。勿論、ソースと辛子も忘れない。私は串のまま食べたいけれど、貴族は串から抜いて食べなさいと言われている。
なのに、お父様はそのまま。お酒で気が大きくなったからだろうか。もう、いいよね?そのままかぶりついて。
シェラザード様もお父様を見て、見様見真似で齧りついた。
「・・・侯爵家の人間になりたい。」
また、言っている。辛子も問題ないようで何よりです。育ち盛りのシェラザード様は、30本食べて食事が終わった。
青海苔のお味噌汁も、三杯お替りしていました。良かったです、お口に合ったようで。
「では、私は帰る。」
「えっ?今からですか?」
「明日、予定があるからな。また、近々来る。」
そう言って、魔法で消えた。いきなりで驚いて腰が抜けるかと思った。が、アッサリとしたお別れに少し寂しさを感じてしまう。
が、直ぐにまた現れた。
「忘れてた。」
「えっ?」
「おやすみ、アメリア。」
私に口付けを残しては、再び消えた。あぁ、もう・・・好き。
急なシェラザード様の訪問から数日後のこと。
巨大な魚が獲れたと言うことで、献上されたのだけど・・・その魚を見て歓喜に沸く私。
「ブリしゃぶ食べたい。」
新たにメニューとして増えた瞬間だった。特に、ブリしゃぶはお母様のお気に入りとなった。その翌日。屋敷にある炊き出しに使うような大鍋でブリの照り焼きを作って貰った。
献上してくれた漁師にも、お裾分けすると大層喜ばれた。これは、ライスが進む。でも、食べ過ぎると太るので程々に。