第4章 Backtrack
「久しぶりだな!タケミチ!!」
「イタタタタ!痛いよアッくん!!!」
「中学の時以来か!?」
「…」
ごめんなさい、タケミチくん
本来なら僕なんかが立ち入るべきではない、御友人同士の会話
でも、どうしても自分の耳で確かめたかった
「あん時重要なとこで山岸が」
「そーそー!屁ぇこいて台無し!!」
「ふっ」
イヤカフから聞こえてくるタケミチくんの中学時代のバカらしい思い出
その内容に思わず吹き出してしまう
僕はタケミチくんの服の裾に盗聴機を付け、VIPルームでその音声を聴いていた
…申し訳ないとは思いつつも、どこか抜けているタケミチくんと素性が読めない伊織さん、何を考えているのかわからない松野さん
どうしても自分で確かめたかった
「一緒にいたやつ、警察だろ?」
「!?」
バレている
それから千堂は僕が先日死んだ橘日向の弟であることも言い当てた。
「それに…伊織さん、覚えてるか?
喧嘩賭博の時手当てしてくれたあの美人の…」
「あ、ああ。」
「あの人も帰ってきたんだろ?」
…全てが筒抜けだ
タケミチくんだけでなく、僕も、伊織さんまで
「…なんでそんなこと知ってんだ?」
「東京卍會ってのはそういう組織だ」
「っ」
「…」
やはり、僕たちは彼らを侮っていた
100歩譲って僕の素性がバレていたのは納得しよう
だが伊織さんの帰国がバレていたとなると、、、それは外務省にも彼らの手が及んでいること、又は海外に手を伸ばしていることを意味する
「伊織さんはな、どこに居るかはわからなかったんだ。
だがな、帰国したことでデータに残った。
それでもう少しで手が届く、と思えば仕事先にもしばらく出てきていない。
俺たちも死に物狂いで探してる。」
…幸い彼女は僕の部屋でずっと寝ていた
仕事先に連絡も取っておらず、普通に考えたら失踪したもの同然
彼女はやはり狙われている
彼女に思い当たる節がなくても、その事実は変わらない