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ONE MORE CHANCE【東リべ】

第1章 Blanc


『圭くん痛いよ。』

「あ、わり!」

『ふふ、たかちゃんならもっと優しく拭いてくれた。』

「うるせぇな!」

『ふふ、あはは!』











可笑しくてつい声を上げて笑うと、圭くんが少し驚いた顔をした。












「…なんか、久々に見た気がするな、お前の笑顔。」

『あ…』

「それが見れただけで俺は十分だ。」

『…さっきさ、圭くんは行く理由は聞かないっていったじゃん?』

「おう。」

『強いて言うなら、、、
みんなとの約束を守るために行くの。』

「…」

『意味なんて、もうないかもしれないけど、、、
…勝手に決めてごめんね。』

「そうか。
…お前が決めたことなら、別にいいよ。
伊織、向こうでも頑張れよ。」

『圭くんも、頑張って。無茶したらダメだよ?』

「はっ、心配いらねぇよ。
俺には最高の相棒、千冬がいるからな!」

『ふふ、それなら千冬くんは苦労するね。』

「ああ!?どう言う意味だコラ!」

『あはは!
…じゃあ、本当に行くね。』

「ああ。」

『こっちに帰ってきたら、1番に訪ねにいくから。
忘れないでね?』

「お前こそ。」

『もちろん!』

「じゃあ、また、な。」

『うん。また。』











それから私は一度も振り返ることなく搭乗口へと向かった。













ーー
ーーー
ーー













私がアメリカでもちゃんとやっていけたのは圭くんとのこのやりとりがあったからだ。





…そうだ。
帰ってきたら1番に尋ねるって、約束したんだ。







『3時、か…』








連絡を絶ったから、あの頃のみんなの電話番号なんて知らない。

この10年、技術も進歩したことだし、覚えていたとしても変わっているかもしれない。





でも、、、連絡手段なんかないけれど、みんなの家ならわかる。






不在かもしれないし、忙しいかもしれないけど、、、
行ってみないとそれもわからない。













『引っ越してなきゃいいけどなぁ…』












圭くんのところはおばさんが居てくれたら助かるな。




私はお守りを首から下げて服の中に入れ、バッグを手に取った。

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