第1章 Blanc
『…ありがとう。』
「ただの自己満だ。」
『…ごめんね。』
「うるせぇ。
謝るくらいなら行くなよ。」
『……ごめんね。』
「…」
圭くんは大きな手でガシガシと自身の頭を掻く。
それから徐に首元を漁ると、首から掛けていたであろう何かを私の首に掛けた。
「それ、お前にやる。」
『!これって、、、』
「俺の宝だ。
つっても…元々お前の金で買ったモンだったけどな!」
『まだ持ってたんだ…』
その時からすでにボロボロだった交通安全のお守り。
東卍結成を決めた日に買った。
…みんなで買おうって言ったのにみんな財布忘れたんだもん。
結局私が買って圭くんに預けたんだ。
…私たちのあの日の思い、全てを乗せて
と、私が乗る飛行機の案内放送が流れる。
それにピクリと反応すると、圭くんが少し苦しそうに笑った。
「…もう時間か。」
『うん。
…お守りありがとう。』
「ああ。気をつけてな。」
そう言い合って、くるりと踵を返す。
溢れ出しそうになる涙を溢さないように、必死に目を見開きながら歩いた。
パシッ!!
『!圭、くん…?』
「…」
キャリーケースを持っていない、左側の手を掴まれた。
驚いて彼の方を見ると、下を向いて目が合わない彼がいた。
「…お前が何で行っちまうのかは聞かねぇ。」
『…』
「俺は馬鹿だが、誰よりもマイキーと伊織のことはわかってるつもりだ。
お前の行動には絶対何か理由がある。」
『…』
「だからよ、」
そこまで言うと、圭くんは顔を上げ、ニカリと笑った。
「安心して行ってこい!
マイキーのことは俺に任せろ!!」
『!!』
「大丈夫だ!
お前が向こうに居る間は俺がアイツを支えてやるから!」
『圭くん!』
「だから、泣くなよ。
出発の時くらい笑えよ。」
そう言って圭くんはいつのまにか頬を濡らしていた私の涙をゴシゴシと拭った。