第17章 Last chance
考え始めてからは早かった
もう何もない
失うものも、守るものも
生きていくには重たい身体だけど、終わりへ向かうのには踊り出しそうなほど軽い
橘直人のパソコンから稀咲のスマホに直接メッセージを送った
痕跡は敢えて消さなかった
送信相手のパソコンの持ち主は天敵…警察だから
あとは…なるようになって今に至る…
「伊織?」
─伊織
やめて
その声で私の名を呼ばないで…
燃え尽きた灰には2度と温もりは戻らない
貴方を救うことも、みんなを助けることも、私にはできない
あんなにも酷い未来だったのにどうしてだろう…不思議と、後悔していることは何もない
だからこそ、あの未来を変えるつもりもない
また新たな地獄を見るより、今の方がずっといい
これより深い闇があったとしても、知りたくない…