第17章 Last chance
怖い…?
怖いって…なんだっけ…?
いや、知ってる
私はその顔を何度も見てきたじゃないか
恐怖に歪んだ顔を最後に散っていく人間を何度も、見てきただろう…?
─
──
───
恐怖とは、自らが怯えるものではなく誰かに与えるものなのだと
そう感じるようになったのはいつからだろう
誰かに、何かに対して恐れることなんて、とうの昔に忘れてしまった
人を殺すことにも自らが殺されることにも、今更抵抗はなかった
例えそれが大切な仲間だったとしても、その場面になってしまえば何も感じない
仕方なかった、そんな運命だった、そうなるべくしてなった
…そんな風に受け入れてしまえば楽だった
そしていつかやってくる自分の番を待ち続けるのに、私はもう疲れてしまった
みんなを手に掛け始めてから、私の最期を摘み取るのは万次郎だと信じて疑わなかった
まさか彼が先に逝くとも思わなかったし、その最期を私が看取るとも考えなかった
そしていよいよ、1人になった
1人きりで取り残されて、また前を向けるほど私の身体は軽くない
幾重にも重なり巻き付く罪の鎖はひどく重くて、少し動くだけでも億劫だ
何が最初だったか…
いつから壊れたのか…
何から間違えていたのか…
結果はもう、変わらない
考えてもどうしようもないことばかり考えて、結局同じところに行き着く
わからない、わからないけど…誰かが言うんだ
イザナと稀咲…あの2人を許すな
アイツらだけは生かしておくな
最後に生き残ったお前に役目がまだ残っているなら、きっとそれだけだ
そう、頭の中で誰かが叫ぶ
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で、目を真っ赤にさせて、私の手を取りそう叫ぶ
あの2人を殺せ
アイツらのせいであの子は死んだんだ…!
地面に座り込んだ彼女は声にならない声で叫び続ける
私のせいじゃないと、あの2人のせいなんだと、
あの時には手遅れだったんだと、私に出来ることはなかったんだと、
縋るように私の手を握り、時折頭を抱えながら訴える
…もう、いいか
万次郎もいなくなって、みんなみんな死んじゃった
私ももうすぐ順番が回ってくるはず
なら、最期にずっと叫び続けてるこの子の言葉くらい聞いてあげようか