第17章 Last chance
「あ"ー…こんな時に限って伊織が動かねえんだもんなー…」
「え?」
「普段のアイツならこういう事前の調べも俺らより完璧だし、何よりこうなる前に対処してたりすんだよ、アイツは。
伊織がいるのといないのとじゃ何もかもが雲泥の差だからな。」
「へぇ…」
「そういえば…さっきの手紙、マイキーのことはすごく嫌ってる風だったけど伊織には会いたいって書いてなかった?」
「え?」
「ほら」
エマちゃんがそういいながら指差す文章
【早く伊織に会わせて】
「本当だ…え?
伊織さん、黒川イザナと面識あるんですか?」
「いや…それはあり得ねえ。
少なくともそれならマイキーがそのことを知ってるはずだ。」
「そうなんですか?」
「…まぁ今でもそうだが、伊織は昔からコミュニティは広くない。
伊織の世界は今も昔もマイキーを中心に回ってる。
アイツの交友関係は俺ら東卍とエマが中心。
学校でも俺らと連んでる以上大抵のやつは寄り付かねえし、放課後も基本俺らと一緒にいる。
ここ数年じゃまず無理だろうな。」
「ドラケンと出会う前も多分無理だよ。
伊織いっつもウチとマイキーと真兄といたし。
真兄と伊織が2人でいないことなんてなかったよ?」
「なるほど…」
それなら無理…なのか…?
「まぁ真一郎くんも馬鹿じゃねえ。
流石にイザナがやべえ奴だってことくらいわかってたはずだ。
そんな奴に伊織を会わせに行くような人じゃねえよ。」
「確かに…そうですね」
「じゃあもしかしたら黒川イザナは伊織にはまだ会ったことなくて、今も会いたがってるかもしれないってこと?」
「かもな…アイツの周りも注意しとくか」
未来で彼女は生きてた
多分イザナは彼女に直接危害を与えるわけではないんだろう
─死ね…イザナァァ!!!
あの時感じたのは純粋な敵意だけ…
今まで面識がないなら、イザナはこれから伊織さんの逆鱗に触れる何かをするってことだ
殺されるほどの恨みを買う何かを…
イザナは一体何をした…?
伊織さんはなぜイザナから求められていた…?
イザナが発した「姉さん」という言葉…
あれにはどんな意味があるんだ…?