第4章 Backtrack
『誰を殺すって…?』
「っく!」
反射的に身体が動き、床に橘を押さえつける
千冬くんも怒っていて、私の後ろに控えるように立っているのがわかる
「あ、あの、伊織…さん?
落ち着きましょ、その…直人だって色々…」
わかってる
わかってるけど、死んで当然
殺されて当然
そんな顔をコイツが一瞬でもしたのが許せなかった
万次郎のことなんか知りもしない癖に…!!
『…姉が殺され、その組織のトップの万次郎を恨むのは理解はできる。
誰が誰をどう思おうが人の評価は自由だ。
それを侵害するつもりはない。』
橘直人は私を剥がそうともがく
それもそうだろう
肺が圧迫されて苦しいだろうから
『だがな、口にしていいことと悪いことがある。
胸中ではそう思っていても、私の前でそれを口にするな!
…忘れるなよ。
私と千冬は目的は違えど、結果的にお前の姉が生きる未来を望んでる。
そのために過去で手を尽くしてる。
いい歳した大人が、自分だけの尺度で物を語るな!』
「ゲホッゴホッ!!」
「直人!大丈夫か!!」
私が手を離すと、橘直人は勢いよく咳き込む
それに駆け寄る花垣を横目で見ると、私は床にへばる2人を見下ろす
『で?これからどうしたい?
私は今からすぐにタイムリープしなおしても問題ないが。』
そう言って橘直人と花垣を見つめる
花垣はオロオロとするだけで何も言わないが、橘は少し考えて私の方を見た
「2日ほど、時間をください。
2日後の同じ時刻にここへ。」
『…わかった。
私たちは一旦帰る。
千冬くん、帰ろ?』
「はい。」
私と千冬くんはそれだけ言って、橘家を後にした。