第17章 Last chance
「あの…エマちゃん!」
「ん?」
「そのお兄さんのことで何か覚えてることないですか?
伊織さんとなんか関わりあったとか!」
「伊織と?」
「お前さっきから伊織とこじつけたがりすぎじゃね?
アイツには兄弟もいねえし俺ら以外に大したコミュニティもねーよ。」
「うーん…ウチもそう思うけど…
あ!でも、真兄とは仲良かったみたいだよ?」
「え?シンイチローと?」
「うん!ちょっと待ってて!」
「おい…」
ドラケンくんが呼び止めるのも気にせず母家の方へ走っていくエマちゃん
少しすると1つのお菓子の缶のようなものを持って帰ってきた
「じゃーん!」
「何これ」
「真兄の遺品整理してる時に出てきたの」
「これ…手紙の束…
黒川イザナからの…え!?もしかしてコレ全部!!?」
缶の大きさは大体20センチ四方
その中にぎっちり入ったハガキの束たち
…これ…軽く100枚は超えてるんじゃないか…?
「全部は目ぇ通してないけど…この量、そーとーな仲良しでしょ」
「仲良しっつーか…ちょっと怖えな…」
若干複雑な心境のまま、俺たちは適当に手紙を手に取って内容を読む
…ハガキに書かれている文字はそれなりに小さくて、適当に書いているわけでも惰性で書いているようにも見えない
ちゃんとこの手紙は黒川イザナの意志がある
「なんかわかった?」
「うーん…今日は何があったとかそんなのがほとんどだ」
「…多分これが1番最初の手紙だ
【拝啓 佐野真一郎様
この前は訪ねてきてくれてありがとう。
家族がいて嬉しい。】」
真一郎くんの方から会いに行ったんだ…
「きっとどっかでイザナの存在を知ったんだろうな」
「…なるほどね」
「マイキーくん?」
「ちょっと風に当たってくるわ」
「…え?」
マイキーくんはそれだけ言って薄着のまま外に出ていった
しばらくするとバイクの音が聞こえ始め、適当に流しに行ったんだろうと察する