第16章 Murderers
「さぁ、とりあえずお前ら散れよ。
伊織さんは連れ帰らねえといけねえ。」
「伊織サン、帰ろう?」
『…』
「伊織さん…?」
灰谷蘭がそういいながら手を差し出す
伊織さんは鋭い目でその手を見つめる
…どうしたらいいんだ…?
「タケミチくん、逃げましょう。」
「ナオト?」
「伊織さんも連れて逃げないと…伊織さんが連れて行かれたらもうタイムリープもできなくなる…!!」
「っ!」
そうだ…伊織さんがいなきゃここで得た情報も何も意味をなくしてしまう
タイムリープしていい未来にするためにここにきたのに…!
「花垣、高宮を連れて裏から逃げろ。」
「え?」
「とにかくこの女をアイツらに渡したらまずいことになるのはわかる。」
『…』
大寿くんはそう言うとジャケットを脱ぎながら伊織さんの一歩前に立った
「テメェらごちゃごちゃうるせえな!!
誰の店に勝手に土足で入り込んでんだ?ああ!?」
「大寿〜悪いけどお前と話してるヒマないんだわ。
大将が待ってんだよ。」
「伊織さん、早くこっちへ。」
「っ、伊織さん、逃げましょう!」
「はやく!!」
『…』
伊織さんは灰谷兄弟の方をジッと見つめ、ひとつ息を吐くと明らかな敵意を向けて口を開いた
『…もう一度だけ言う。
私はイザナに迎えに来いと言った。
お前達じゃない。』
「あ?」
「ふーん…ならどうすんの?」
『イザナじゃないなら私は行かない。』
「なら力ずくだなぁ。
後で文句言うなよ?
…お前ら、連れ戻せ。」
「「「おおお!!!」」」
「伊織さん!こっちだ!!」
『…』
ナオトを先頭に俺と伊織さんは裏口の方へと身体を向ける
とにかくここから離れないと…!